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彼が隠していた秘密
それから約一年後――。
「日向さん!ごめん。301号室でコール鳴ってるから、見てきてくれる?」
「はい!わかりました」
私は大学を卒業し、高齢者福祉施設の介護職員として働いている。
毎日が勉強。やっぱり座学と現場は違う。
「今日も疲れたぁ……」
帰宅し、一人掛けソファに座り、ふぅと息を吐き出した。
6畳のワンルームに一人暮らし。
時計を見ると、19時近くだった。
もしかしたら……。
期待を膨らませ、スマホを確認する。
「あっ!咲夜くんだっ!!」
スマホをタップし、メッセージの内容を確認した。
<詩葉、お疲れ様。俺はこれから仕事です!頑張ってきます>
この時間だけが唯一の楽しみになっていた。
咲夜くんとは、SNSで知り合った友達。
大学は無事に卒業できたが、あの時の発言を聞いたあと、ゼミの男子と上手く会話ができなくなった。態度が素っ気なくなってしまったり、普通に接してくれる男子にも愛想なく対応をしてしまう。
あまり大きな大学ではなかったのもあり、私の態度がきっかけでどんどん悪い噂が広まっていった。
<何様だと思ってる?>
<自分がモテると思ってんの?>
<コミュ障。急におかしくなった>
気づけば「お疲れ様」の挨拶も自分からできなくなっていた。
<俺、日向のこと狙ってたのに。なんか最近、様子おかしくね?顔も可愛くなくなった気がする>
自分が気にしすぎているだけで、周りはそんなに私のことなんて考えてはいない。
そう考える方が楽なのに、自分の悪評が少しでも聞こえてくるとさらに不信になった。
それが辛くて、SNSで自分の気持ちを吐露した。
友達も家族も知らない、私だけの裏アカウント。
今思えば他人は<痛い子>だと言うかもしれない。
だけど、そんな時に<大丈夫?>と声をかけてくれた人がいた。
それが咲夜くんだった。
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