彼が隠していた秘密

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 最初は咲夜くんのコメントさえも無視をした。  だけど彼はネットの中で私に声をかけ続けてくれた。    顔もわからない相手に、どうしてここまで優しくしてくれるんだろう。  私がコメントを返したのがきっかけで、直接メッセージをするようになった。 <詩葉が悪いわけじゃないよ。そんなこと言われたら、人間不信にもなるよな> <なんかあったらいつでも相談して?> <仕事お疲れ様ー!大変な仕事なんだから、無理するなよ>  彼は私のかけてほしい言葉をいつも伝えてくれる。    次第に私も彼に心を開くようになった。  咲夜くんは、私より三歳年下で、高校卒業後から飲食店で働いているらしい。  毎日、数通だけど、そんなやりとりが三カ月続き、いつの間にか咲夜くんからのメッセージが私の癒しになっていた。  彼のも私の住んでいる場所からそれほど離れてはいない。  電車で三十分くらいの距離だ。  もし彼に会ったら……?  そんな想像もするけど、怖い。  容姿に自信がないし、あの時みたいに――。  数々のトラウマが私の「会いたい」を抑えている。  そんなある日、咲夜くんから一通のメッセージが届いた。 <詩葉に会いたい。今度、遊ばない?>  ドクンドクンと胸の音が聞こえる。  同じ過ちはもうしたくないと思っていたのに。 <うん。遊ぼう>  私はそう返事をしてしまった。  もし私が返事をしていなかったら、咲夜くんと……。  光流(ひかる)さんとも出会うことはなかったと思う。
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