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千穂は網戸を開けると、手をサッシにかた。
「ね! 一生のお願い! 宿題……」
「写させて、だろ? お前の一生のお願いは毎年だな」
幼馴染の千穂の顔をみて溜息を吐く。
くりくりっとした目とにんまりした口元。
ショートボブの黒髪の、よく見知った女の子。
夏の定番、青のストライプ模様のワンピース。
そして悪びれもせず、小脇に宿題ノートを挟んだまま、網戸をあけて窓から入り込んできた。
「よっこいせ」
すらりとした腕と脚をにゅーんと部屋に差し入れて、窓枠を乗り越える。爪先を畳につけて僕の部屋に無事、侵入完了。
千穂はちゃっかり僕の対面でノートを広げ、座布団に座る。
部屋の真ん中で丸いローテーブルを挟んで向き合う。
「あのな、玄関から入ってこい」
「いや、そういうわけにも。葉月のお母さんに『晩ご飯食べてきな!』って言われちゃうし」
てへへと微笑む千穂。人の家をなんだと思ってやがる。
「宿題を写しに来たのバレるからだろ」
「話が早くて助かります、葉月くん」
僕はやれやれと言いながら宿題を見せてやることにした。
毎年の事とはいえ何とも呆れる。
世話の焼ける幼なじみだ。
「いつもすまないねぇゴホゴホ」
「病弱設定やめろ」
早速ノートに僕の宿題を写しはじめる。
「葉月はすごいねぇ、ほとんど終わってるじゃん」
「当たり前だろ。御盆前に終わらせてあとは遊ぶんだ。そういう約束だったろ……」
僕は千穂の顔を見た。
まるい目玉をきょとんとさせて、小首をかしげる。
「あっ……そうだったっけ?」
「忘れてたのか」
まぁ……仕方ないか。
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