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そんなある夜更けに、突然電話がきた。
半分布団の中でとろとろしたまま電話に出ると、いつもの声が耳に心地よく響いてきた。
「桜があんまり綺麗なんで、電話しました」
歩いているのか、車が脇を通るような闇の音がする。
「桜の季節か…」
間取のぼんやりした頭の中で、携帯の向こうに広がる桜の舞う様がありありと浮かんで消えていった。
何故か隣りにいて、同じ桜を観ているように思える。
そんな後輩の声だった。
「いつか一緒に桜見たいな」
珍しい事をいう後輩なのだが、それがあまりにも自然で
「いいよ」
間取はいつものように返事をする。
「じゃあお休みなさい」
「お休みなさい」
あっさり電話は切れた。
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