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それから1ヶ月ほどして、後輩の母親から突然電話がきた。
昨夜から後輩が行方不明で、あなたなら居場所を知っていると彼女から聞いたので電話をしたと話された。
後輩は人気者だったが、友達と呼べるのは間取だけだったとその時言われた。
間取はその連絡で全てを悟ったが、何も伝える事は出来なかった。
後輩は、それを望まないだろうから。
十分歳を重ねたはずの後輩の恋人は、彼を執拗に追い込んで行った。
「私を本当に好きなの? 好きなら証明して?」
後輩は、彼女の望む誓いの言葉を次々に身体に刻んで行った。
それでも彼と少し離れただけで不安になり、彼女は自殺未遂を繰り返す。
四六時中そばに連れて歩き、それでも満ちたりない彼女の心に後輩は必死に寄り添おうとした。
家を出たという夜、間取のところに1本の無言電話がかかってきていた。
あれは後輩だろう。
闇の音がして、何も語られず切れた。
次の日約束したあの桜の下で、亡くなっている後輩が発見されたと連絡が来た。
あんたのせいで死んだのだと。
見知らぬ彼女から電話口で散々罵られた。
間取は、一言も返さなかった。
何も言わない間取に、後輩の愛した女性は叫んだ。
「彼の分まで一生懸命生きるわ!」
電話は切られた。
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