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後輩は、彼の愛を証明する為に最後は自分の命を彼女に差し出した。
本当に満たされない心を抱えて自殺未遂を繰り返していたのは。
彼だった筈なのに。
どんなに尽くされても満たされない彼女。
後輩を疑い続けた彼女。
後輩が求めていたものが何なのか、なぜ命をかけてまで愛した彼の想いが。
彼女には、伝わらないのだろう。
彼は共に死のうと言ってくれる、
そんな生きる為の相手が必要だったと。
なぜ気がつかないのだろう。
間取には、不思議でならなかった。
彼の不器用な行動は、間違えた選択なのだろう。
本当は生きたかったはずだから。
それでも後輩が命をかけて、彼女への愛を証明しようとした。
それが彼の最期の賭けだったのかもしれない。
もしあの日あの桜の下にいる後輩のもとに行ったのなら、彼の人生は変わっていただろうか。
彼は賭けに、勝てたのだろうか。
50になって、ともに桜を見ると約束をした。
その日まで待つと決めた間取が揺らいだのは、彼の賭けの相手が、彼女だったのかと湧き上がる疑問。
彼の死は、彼女の勲章になった。
彼に死なれた可哀想な彼女。
彼の分まで、健気に生きると誓った彼女。
命を賭けて愛を証明され、最期に愛された彼女。
それでも、あの日彼が待っていたのは誰?
間取は、今年も満開のあの桜の下で独り立つ。
不器用な後輩のついた嘘とともに。
後悔という名の、傷とともに。
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