僕の完璧な旅行計画

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「そうだ、妖怪見に行こう!」 アニキが奥さんと、素晴らしいアイディアとばかりに手を打った。 それ、計画に入ってたやつだから。突発性じゃないからね。ネットで調べてプリントした分を渡すと驚きながら喜んでるけど。いや下調べくらいするだろ、普通。 そうして僕らは水木しげるロードを歩いたが、そこでは何と――。 いやもういいな、いちいち失敗談を語らなくても。 それももう、数年も前の話。 予定通りにいかない。必ずアクシデントが生ずる。それがリアル旅行の醍醐味だ。だって、計画通りにいっていたら出会えなかった人や巡り合わなかったものがある。 人と接したり移動したりが制限されるようになったご時世、紙やネット上での空想旅行ばかりしている僕。それは平和で完璧で素晴らしい。でも、何の脱線もないそこには、何かが欠けている。 動くな。しゃべるな。人と関わるな。 そういう日々には、何も起こらない。どこかに逸れることなくほぼ予定通りに回る。でも……物足りない。 いつかまた、あの頃のように旅ができるようになるのだろうか。計画以上の何かを期待しながら、計画を立てていたあの頃のように。 そうだ、あそこ行こうぜ。 アニキのそういう突発性気まぐれ攻撃に耐性がついたせいなんだろうな。僕は、「予想外」を楽しみにする体質になってしまった。 いつか、突然アニキに同じことを言ってやろう。僕はそういう計画を立てる。自由にどこかへ行ける日々を心待ちにしながら。 それでも今だって「ここ」で―― 寝返りができるようになった。ハイハイするようになった。テーブルをよけきれずにつっかえてる。人見知りして大泣き。犬のおもちゃにだけ反応。 予想外に次ぐ予想外。 そんなちびっ子との毎日が、楽しくてしょうがない。 (了)
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