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それは、起こるべくして起こった最期。
「あぁ、とっても綺麗……」
うっとりと空を見上げ呟くのは、声からしておそらく女性。
姿は黒いマントを羽織っていて、誰かは分からない。
「………ど、して……おま、えが……」
うつぶせに倒れ込んでいる人物が黒いマントの人物へ尋ねる。
黒いマントの人物が、誰かなのか分かっている口振りだった。
「どうして?」
黒いマントの人物が首を傾げる。
「それを君が聞くの?」
黒いマントの人物の声色は変わらない。
楽しそうでも、怒っているようでもなく淡々としていた。
「……ゲ、スが……」
「嬉しい、褒め言葉だよ」
暴言を吐かれたのに、黒いマントの人物は嬉しそうに肩を上下させた。
黒いマントの人物の目の前には、息絶えた人間が山となって積み上げられていた。
暴言を吐いた人物は生きた最後の一人だった。
「さようなら、私の―――…」
そう言って、その最後の人物へトドメを刺す。
黒いマントの人物の頬には透明な液体が流れていた。
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