伍の章 高知へ

2/3
前へ
/67ページ
次へ
「なるほど。龍馬は本当にあの時どうして命を落としたのかを調べているんですね。私も――正直あの訃報は聞きたくありませんでした。でも、起こってしまったことを蒸し返しても仕方がないですよね。龍馬が亡くなってから、もう5年も経っているんですから――いい加減前を向かないといけないのは分かっているんですよね」 「そうですか。それで――これは何でしょうか?」 「書簡(しょかん)です。龍馬という人物は筆忠実(ふでまめ)でしたからね――善く書簡を送ってきてくれたんです」  書簡――すなわち手紙だろうか。僕は、龍馬から乙女に送られてきた書簡を読む。それにしても――あれから龍馬は顕現していないな。矢張り――姉の前だと恥ずかしいのか。 「乙女さんから見て、龍馬はどういう人物だったんでしょうか?」 「そりゃ――はなたれ小僧でしたよ。でも、私がいなければ龍馬はこの国を変えることが出来なかった。それは事実だと思っています」  はなたれ小僧か。中々面白いことを言うな。後で知ったが――龍馬は乙女さんから尻に敷かれていたらしい。確かに、乙女さんは気が強いというか、男勝りというような気がした。  色々と取材をしているうちに――話は龍馬と以蔵の関係性へと舵を切った。 「ところで、乙女さんは岡田以蔵という人物をご存じでしょうか?」 「もちろん知っています。以蔵さんは――龍馬と仲が良かったですからね。なんというか、龍馬は以蔵さんを実の弟のように慕っていたましたからね。その結果――京で土佐勤皇党が恐れられるようになってしまったんですけど」 「それで、本題に入りたいんですけど――乙女さんはこの髑髏を見て何を感じますか?」  僕は――乙女さんに黄金髑髏を見せた。乙女さんは、意外な反応を見せた。 「これは――まさしく以蔵さんの頭蓋骨ですね。でも、なぜあなたが持っていたんですか?」 「ああ、少し訳があって。近江屋で騒動があったとき――現場にこの髑髏が残されていたらしいんです。もしかしたら、この黄金髑髏に対する証拠を得られるんじゃないかと思って――僕は高知に来たんです」 「そうでしたか。そう言えば、あなたのお名前をお伺いしていませんでしたね」 「僕は――増澤諭一郎という者です。乙女さん、今後ともお見知り置きを」 「この黄金髑髏、興味深いですね。私も取材に協力しようと思います」 「ありがとうございます。その言葉が聞きたかったんですよ」  こうして、僕は坂本乙女という協力者を手に入れることができた。これで――黄金髑髏の謎について少しでも分かったらいいのだが。
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加