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色々な目線から龍馬を調べるに当たって――僕は漸く「真言立川流」について詳しく調べることにした。真言立川流は、男女が性的な関係で交わることによって悟りを開き、その時に「髑髏本尊」と呼ばれるものを作り上げるという密教だったな。もしかしたら――高知という地にも、真言立川流の信者は少なからずいるのだろうか。いや、いる訳がないか。真言立川流自体は――忘れられた密教だ。今更――復興させる理由なんてある訳がないだろう。いたとしたら――政府の転覆を狙っている可能性もある。いくら大政奉還で天皇が東京へお戻りになったところで、それを善く思わない人間もいるはずだ。ならば――宗教から政府を転覆させるつもりだろう。今の日本は――一応、信仰に対する自由は保証されている。かつてのキリシタン弾圧から時代は変わったのだ。しかし、事実上神道と仏教の信仰のみ許されているのも事実だ。真言立川流は密教だから――邪教に当たる。
そういえば――真言立川流は荼枳尼天を信仰していたな。荼枳尼天といえば――狐か。そして、僕の肉体が龍馬に乗っ取られるのも――狐憑きのようなものだろうか。まさかとは思うが――この近くに稲荷神社はあるのだろうか? 僕は、坂本家の周辺を少し散歩することにした。
坂本家から割と近い場所に、お宮さんが存在している。――稲荷神社か。これは、荼枳尼天との関係性を調査すべきだな。
「あの――すみません、ここは稲荷神社で間違いないでしょうか?」
神主さんが、僕の質問に答えた。
「確かに、ここは稲荷神社だが――それがどうしたんだ?」
「いえ、なんでもありません。少し気になっただけです」
「そうか。だったらいいのだが」
確かに――お宮さんには狐が祀られている。荼枳尼天で間違いないだろう。荼枳尼天は――玉藻前が変化したものであると考えられている。ならば、ここは――真言立川流が関わっているのか。そんな事を考えていると――突然黄金髑髏が光りだした。黄金髑髏は、今まで見たことない光を放っている。なんだか不気味だ。
僕は、僕の中にいる龍馬へ話しかけた。
「龍馬――髑髏が光っているな」
龍馬は――僕の質問に対して答える。なんだか――生前の龍馬を見ているようだ。
「そうじゃのう。わしも――ここまでの眩さは見たことがないぜよ」
「矢っ張り――以蔵さんは真言立川流の信者だったのだろうか」
「それは――分からんぜよ。けんど、以蔵がそういう信仰を持っていたのは間違いないじゃき」
そうなると――矢張り、この黄金髑髏は以蔵の怨念が凝ったものなのか。そんな事を考えていると――突然、背後から刀を抜く音がした。
「わしを解放するとは――おまんも好事家じゃき」
「い、以蔵さん!?」
「諭一郎、いかんぜよ! 此奴は以蔵なんかじゃないき!」
「どういうことだ」
「此奴は、以蔵の形をした――悪霊じゃき」
「つまり、以蔵さんは成仏出来ていないのか」
「そうじゃ。此奴を成仏せん限り――以蔵は報われんぜよ」
「それじゃあ――倒すしかないのか」
「そうぜよ。諭一郎――覚悟は出来とるか?」
「もちろんだ」
僕は、決意した。――以蔵さんを、この手で成仏してやる。
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