漆の章 残党

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 翌日。僕は改めて件の廃寺へと向かった。もちろん、廃寺には誰もいなかったが――僕は少し気になるものを見つけた。それは割と新しい曼荼羅が壁に掛かっていることだった。廃寺だったら、ぼろぼろに破かれた曼荼羅が壁に掛かっていてもおかしくはない。しかし、壁に掛かっている曼荼羅は明らかに新しいものだったのだ。なんというか、その曼荼羅からは禍々しい「気」を感じた。  そして、床の上には作りかけの髑髏本尊が置かれている。まだ、金箔はそんなに貼られていない。髑髏の主はともかく、この髑髏本尊を完成させる前に白頭巾の集団を壊滅させないといけない。僕にそんなことができるのか。  色々な事を考えつつ、東都日日新聞の本社に戻ると――編集長が待っていた。 「増澤君――とんでもないことに巻き込まれてしまったようだな」  編集長の言葉に、僕は一瞬頭が固まった。 「とんでもないことって、どういうことでしょうか?」 「どうやら、あの白頭巾の集団は土佐勤皇党の残党で間違いないらしい。彼らは今の明治政府に不満を持っていて――政府の転覆を狙っているとのことだ」 「そうですか。――僕、その集団を壊滅させたいと思います」 「そんなことができるのか?」 「任せてください。僕は、一人じゃないですから」 「そうだな。ここは――増澤君の中に宿った坂本龍馬の魂に全てを賭けるとしよう」  ――僕は、覚悟を決めた。
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