どうせ身代わりで嫁いだ身ですので、離婚してくださいませ、旦那様

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「というわけで、離婚してくださいませ、アルファ様」 「………………」  2ヶ月ぶりに会った夫との食事中、私はニコニコと笑顔で離婚を切り出しました。アルファ様は驚いて固まっています。  驚きすぎて、たった今、フォークとナイフを落としたところです。執事が慌てて新しいものを差し出していますが、それすら気づきません。あ。執事が諦めて、テーブルにフォークとナイフを置いたわ。  ふふっ。それにしても、こんなに驚いたアルファ様の顔を見るのは何年ぶりかしら? 「それは……困る…………」  蚊の鳴くような小さな声が聞こえてきました。  あら、この人の声を聞くの何年ぶりかしら? 口、聞けたのね。てっきり、もうしゃべる気がないのだと思っていたわ。  あれこれ考えているうちにアルファ様が立ち上がりました。トイレでしょうか? 「……困るんだ」  もう一度、困ると言って、出て行ってしまったわ。逃げたわね。 ふぅ……。  私はこれからどうしようかと考えを巡らせながら、食事を進める。  あ、とりあえず、冒険に必要なものを揃えましょうか。そうしましょう。たしか、テントが部屋にしまっていたはずだわ。キレイに洗ってしまわないと。  食事を終えた私は、足取り軽く部屋に戻りました。 「これは……」
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