どうせ身代わりで嫁いだ身ですので、離婚してくださいませ、旦那様

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 幸い今日はよく晴れています。乾かすにはもってこいです。テントを取り出してくると、屋敷の者に「奥様、それは!?」と、青ざめられましたが、気にせず洗うことにします。  洗うためにテントを中庭で広げていると、屋敷の者がそれはそれは急いでやってまいりました。アルファ様からの手紙だそうです。お仕事中に手紙だなんて初めてだわ。中身はこんなことが書いてありました。 『ミランダへ  予備のテントは穴が空いているからやめた方がいい。暖かくなってきたとはいえ、夜はまだ冷え込む。すきま風があるテントで寝たら風邪をひいてしまう。君は風邪をひきやすいから心配だ。お願いだから、出ていくなんて言わないでほしい。  アルファより』  テントに穴ですって?あら、本当だわ。こんな所に穴が……  でも、穴ぐらいでやめるようなら最初から冒険者になろうなんて思わないわ。こんな穴、ふさいでしまえばいいじゃない。  私は裁縫道具を取り出して、テントを縫うことにしました。  ちくちくちくちくちく…… 「できたわ……」  ものすごく時間がかかりましたが、どうにか穴は塞がれました。よし、じゃあ、洗いましょう。あぁ、その前にお返事を書いておかないと。私は手紙を書き始めました。 『アルファ様へ  ご忠告ありがとうございました。でも、穴は塞ぎましたので、ご安心ください。私は冒険者になりたいのです。きれいな星空を見ながら寝て、小鳥のさえずりと共に起きる。そんな自由な生活がしたいのです。だから、離婚してくださいませ。  ミランダより』  よし、書けましたわ。あらあら、いつの間にか、日がくれてしまいました。これでは、洗濯は無理ですわね……。仕方ありません。明日にいたしましょう。
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