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「サユにちょっかい出したのか?」
バイクに跨ったままの男の声に
「ううん、あっち」
両手の塞がる西名さんは顎で女子生徒を示す。
「現状は?もうイッてんの?」
「まだ」
「どっちも?」
「うん」
「1本も?」
「まだ。指の1本くらいハズしておこうか?」
「今はダメだ。照会はしてやる。偽名だったら永中まで送ってってやるから、そこでヤれ」
「きぃちゃんも丸くなったねぇ」
きぃちゃんというのか…男がグローブを外した左手の指をクイクイと動かして西名さんを呼ぶと、彼女はもう二人には興味なさそうにポイ捨てする。
そして落ちてたバッグを肩に掛けながら男の側に行くと
「あーん」
と口を開けて何かを口に入れてもらったようだ。
「あぁ…ぁの名前、間違ったっ…オレ…」
「残念。もう受け付け締め切ってるから、ごめんなさいね」
全くごめんなさいのトーンでないごめんなさいを吐いた西名さんの束ねた髪は、グローブを着け、シールドを下ろした男の手でとかれる。日常のことなのか彼女は軽く頭を揺らし、それが真ん中で止まった瞬間、ぐいっと彼女にフルフェイスのヘルメットが被さった。
カッコいい、可愛い、頭もいい、声もいいってどうなってんだ…
「西名さん、さっきの話」
俺が彼女に駆け寄ると、彼女はヒョイっとバイクの後ろに乗ってバッグを肩に掛け直した。
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