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シールドの向こうは見えないが、男の視線は俺を向いたと思う。なのに重いエンジン音を立て始めると、西名さんがバンバンと男の横腹を叩きながら自分のシールドを上げて
「なに?離れないと危ないよ?」
結局止まらないエンジン音に負けない声を俺に投げる。レザージャケットがバンバンいってるのに、男は西名さんの手を無視か?
「さっきの話。付き合う条件は?」
直季に煽られたお遊びの告白だったがやる気が出てきた。好きになったとは言わない。そうじゃなくってやる気が出てきたんだ。
「付き合う?ああ…アレ…アタシより強けりゃね」
そう言うとパンッ…西名さんが片手でシールドを下ろし、片手で男のレザージャケットをクイクイと引っ張った瞬間…ブンッ…急いでいたのか?
「あれ、誰かな?」
「さあ…でも“遅いと思って来てみた”って言ったから、迎えに来てたんだよな」
「そうなるね」
「やる気出てきた」
「言った通り、退屈じゃなくなるね」
俺と直季が並んで話す前に
「三井先輩、ありがとうございました」
半分泣いてた女子が来てコテンと首を横に倒す。1年か…知らない子だな。
「俺は何も」
「でも先輩とあの人が来てくれたから助かったのでありがとうございました」
今度は肩をクイッと…ああ…作られた動きに嫌悪感が生まれたのは今日が初めてだ。
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