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B組の前で直季が“あの子”と言うと、探すことなく俺の視線はその子へと移った。
「またスマホと本の二刀流してるな」
「相変わらず」
また“相変わらず”かよ。語彙力ないぞ、直季。
去年は同じクラスだったあの子、西名紗友美は中高一貫校のこの学園へ高校から入学してきた少数派。
中学から入ってる俺達は中学終了時点で高校範囲まで進んでいたのだが、それ相応の試験をクリアして来た彼女。
中高一貫校への高校入学の場合、1年の時には高校入学組クラスが編成される学園が多いらしいが、この星逢学園にはそんなものはない。中学からの進級組と同レベルの学力を証明する試験をクリアして、混合クラスで入学する。混合と言えるのか疑問なくらい、高校からの入学生徒は片手に満たない人数しかいないのだが。
そしてこの学園は学力を重視しながらもわりと自由だ。校則が緩い。緩いが点数取れよ、ということ。それだけ。
授業中も緩い。どの教科も進度は早いが、授業妨害にならなければ他教科の課題をしていようが咎められることはない。ないが点数取れよ、ということ。それだけ。
そんな中、西名紗友美は自分から誰とも関わることのない様子でいつだって文庫本とスマホを手にしていた。他の生徒はすでにそれぞれ友達がいるから、わざわざ彼女に構いやしない。
もちろん俺もそうだった。
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