2-Aの邦親くん

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「にっしなさんっ」 はっ?速いな。 “にっし”が階段を下り始めた彼女に届くと、もう彼女は踊り場にいて、くるりと見えなくなった姿を追うように“なさん”と続けたが、彼女はすでに階段を下りきっていた。 「西名さーん」 俺の声に立ち止まるはずの彼女は校舎を出て、他の女子が立ち止まったり振り向いたりする。 タッタと数歩駆けると 「西名さん、待って」 彼女の隣から顔を覗いた。 「何?」 本当に“何?”っていう顔過ぎてちょっと笑いそうになった俺が 「俺の名前、分かる?」 と聞くと 「うん」 最短の返事と共に彼女が再び足を進め始めた。 「俺、誰?」 「…どうしたの?記憶喪失?」 「あはは…俺が認識されてるか確認」 「ちょっと面倒だね。三井君が笑っただけでキャッキャ聞こえるもん」 「面倒だね」 「そうじゃないよ。その三井君がアタシに話し掛けてる状況が面倒ってこと」
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