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あれから
~三か月後~
ホワイトカラント公国
「聖女さま、少しお休みになってください」
瞬間移動でこの邸宅に戻って来た時、独立してホワイトカラント公国となったことを伝え、領民たちにもお触れを出した。
もともと、ゲス父は領民たちから慕われていなかった。
あくまでもここは”ホワイトカラント公爵”であるお母様が治めていた場所で、ゲス父の目をぬすんでわたくしもここに来ていた。
ただ、あくまでもゲス父が公爵代理をしていたから表立って活動することが出来なかったが、今ではゲス父のせいで整備がおくれているところもどんどん手をつけていくことができる。
すぐに取り組んだのは、領地に結界を張ること。
以前は、国の一部だったため、結界内に入っていたが、結界の解除をしたためあらためて公国に結界を張る必要があった。
あとは、国としての形を作るために執事のグリットと人選を急いでいる。
邸宅の改築も必要で、ある程度城としての機能を保てるものに作り直している途中だ。
そしてわたくしは領内をめぐりながら、農地の浄化をしながら公国となった説明をしている。
その中で、必要な施設のことを考えて行くが、出来立ての国にお金が潤沢にあるわけでなく頭を悩ませていると、土魔法で土地の状態を調べているとき妙な感覚があり掘ってみると金脈を見つけた。
だれか、優秀な補佐が必要ね・・・
一人の男性の顔が浮かんでくる。
何かと気を使ってくれた人
ハルトさまはどうしているのかしら?
バカ殿下を浮気者と言っていたけど、ある意味わたくしもそうだったのかもしれない。
ただ、行動を起こしてふたりの世界に入り、人目もはばからずイチャイチャしてバカな行動を起こしたおバカ殿下に対して、ハルトさまへの気持ちはずっと隠し続けてきたわたくし。
ハルトさまは無事でしょうか?
かの国は断続的に魔物が国内に入ってきているらしく、討伐隊が組まれているが今まで実戦経験のない兵たちでは苦戦を強いられているようだ。
マリナは結局、王族に魅了魔法を使ったことで処罰を受け、犯罪者たちが就労している鉱山で魅了魔法により”救護”活動をしているとのことだ。
アルフレードさまは王位継承権をはく奪されて騎士団に入隊し、王都をまもっていると聞いている。
本来は責任感のある方ではあったから、少しずつでも国民の信頼を取り戻して欲しい。
ゲス父と義母は聖女殺害の罪で処刑され、二人の頭部はしばらくは市外にさらされていたが、入ってきた魔物に食べられたと聞く。
ゲス父の愛人であったメイドは亡くなる寸前のお母さまの魔法により地下の隠し部屋にある魔法陣に飛ばされたようで、お母さまが亡くなって少ししてから魔法陣の上で凍った状態のメイドを見つけた。
お母さまは見た目”だけ”は良かった父の口説き文句にすっかりのぼせて結婚してしまってから本性に気が付いたが、婚姻届けが陛下に受理されてしまい離婚は難しかった。
そこで、わたくしを欲しがった陛下と公爵位と公爵領についての約束をしたのだ。
お母さまは最後の最後にゲス父を追い込むための証拠をわたくしに残してくれたのだと気が付き、いつか来る日のための切り札としてメイドは凍ったまま保存をした。
凍っている間も意識があり、わたくしが解凍すると泣きながら真相を語り始めました。
聖女であり公爵であったお母さまを手にかけた段階で極刑は免れませんが意識があるまま凍っているのは死ぬより辛かったのでしょう。
今はこの国を発展させることに心血を注ぐ
土地に手をかざし状態を確認してから土魔法と光魔法をまぜたものを浸透させていくと、作物たちが一瞬踊り出したかのように見えた。
「聖女さま本日はこの辺で帰城しましょう」
公国ではわたくしは公王という立場ですが、王と呼ばれることに慣れておらず、落ち着かないと言っていたら”聖女”という名で皆が呼ぶようになった。
だから、この国ではわたしを聖女と呼ぶものがほとんどで公王、陛下と呼ぶものはごく少なく、その少ない者はたいていよその国の人間だ。
馬車に乗り込もうとしたところで遠くから蹄の音が聞こえ一頭の馬が近づいてくる。
「聖女さま、馬車にお乗りください」
危険を感じ取った護衛騎士があわててわたくしを馬車に乗せようとしたとき
「ホワイトカラント陛下」
わたくしを”陛下”と呼ぶ懐かしい声が聞こえてきた。
それは諦めた恋
思わず馬に向かって走るわたくしを護衛騎士であるハスカップ卿が慌てて追いかけてくる。
「ハルトさま」
その呼びかけに馬に乗った男性は馬から降りると満面の笑みでわたくしの足元に跪いた。
「遅くなりました。わたしを陛下の元で使ってください」
「丁度よかった。隣でわたくしを支えてくれる人が欲しかったの」
「わたしで良ければ誠心誠意勤めさせていただきます。ホワイトカラント陛下」
「わたくし、陛下と呼ばれるのは好きじゃないの」
そう言って手を差し出すとハルトさまはわたくしの手の甲にそっと口づけをしたあと
「いつまでも聖女エミリアさまと共に」
と言って微笑んだ。
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