電話越しの記憶

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 「ごめん」  なんだか、無駄に疲れた。  『こっちこそ、突然ごめんね』  テレビから聞こえていた声だ、とミーハーなことを考えてしまう。  「どうやって俺の連絡先を?」  「あさひにきいたの」  あさひとは、ゆづも俺も仲が良かった同級生。きっと引っ越したあともやり取りは続いていたのだろう。  「そっか」  『うん』  それからしばらくぎごちない会話が続いた。  何か話しては、2、3回やり取りして黙る、ということを繰り返した。  久しぶりすぎて、どう切り出せばいいか分からなかった。どこまで聞いていいのだろう、とか余計なことも考えてしまう。  「でさ、今日はどうしたの?」  『あ、そうだよね。えっと、蒼太って、引っ越したりしてないよね?』  引越しはしたが、同じ市内であることを伝えると、  そっか、と、  『今度、当時のみんなで集まりたいな、って。蒼太もどうかな』  と聞かれた。いわゆる同窓会みたいなものか。  「別にいいけど」  『よかった』  今の仕事のこととか、その時に話そう、といって、それから直ぐに電話を切った。  嬉しいはずなのにもやもやする。なんだか不思議な感覚が胸を巡っていた。
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