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「あと1時間ですよ……」
スマホのロック画面に表示される時間を見てつぶやいた。
久しぶりに会えた憧れの先輩と付き合い始めた今年の夏。
でも今日で会えるのは最後。
この夏に会えるのは最後。
「時間すぐ過ぎちゃうね」
先輩もつぶやいた。
一緒にいて楽しくて安心できて、でもやっぱりドキドキして。
高校入学当初からずっと憧れだった先輩と付き合えることになって、すごく嬉しくて。
離れたくない……
そう思っていたら涙が出てきた。
でも先輩を心配させないように、目からこぼれ落ちないようにする。
「どうしたの、そんな泣きそうになって」
「だって……」
寂しい、って言葉にしていいのか分からず言葉に詰まる。
「だって?」
「やっぱいいです」
いつも通り、「やっぱいいです」で終わらせてしまった。
恥ずかしくて言えない時、いつも私は「やっぱいいです」で終わらせてしまう。
でも今日は、この夏最後の日。
先輩は通ってる大学のある秋田県に帰る。
つまり、明日からは当分会えない日が続く。
だからこそ、ちゃんと伝えないと。
「あと1時間で会えなくなるの寂しくて」
言葉にして言った途端、目の際で留めていた涙が一粒落ちた。
私の涙は都会の夜に消えていく。
「また2ヶ月後会えるよ」
優しく甘く伝えてくれる先輩を見て、涙がもう一粒落ちた。
「う……」
涙腺崩壊。
「ひなた、まだ1時間あるよ。早いよ」
私を励ますために笑いながら言ってくれる。
「……ですよね、あと1時間あるので」
「うん」
「楽しみましょ」
「そうだね」
両手の人差し指で上を指して「ウェーイ」と言ってみる。
「なにそれっ」
先輩のツボに入ったらしい。
「さぁ、先輩も一緒に!」
「「ウェーイ」」
「シュールすぎでしょ」
「こんな綺麗な夜景見る場所でやるテンションじゃないですよ」
「ほんとだわ」
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