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電車を降りて、家までの道を歩く。
「……この辺で大丈夫です」
「ん、じゃあ、」
「また」
寂しい……
そう思った時、隣にいた先輩がさっきみたいに肩をぐっと寄せてきた。
ハグではない、でも抱きしめられてるような。
私の溢れ出す思いが手に伝わり、自然と手を広げていた。
「おいで」
先輩がつぶやく。
先輩と初めてハグをした。
先輩の肩が私の頭くらいの身長差。
先輩の手が私の頭を撫でる。
寂しいと思う心を埋めるように、体の隙間を埋めるように。
「先輩、」
「ん」
「泣きそうです」
「泣いていいよ」
泣きそうだけど絶対泣かない。
心配させないために。
「じゃあ……また秋にね」
「はい。じゃあまた」
手をグーにして先輩の方に出すと、先輩も続いてグータッチをしてくれた。
「またね。」
「また今度。」
見送ってくれる先輩に背中を向けて歩き出した。
『君と会えなくなる夜も』 完
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