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闇の海
孝一達の前に戦艦が現れた。
出迎えの人が何名か手招きをしている。
みんな一斉に身を乗り出した時、戦艦が襲撃を受けた。
B29が密かにこの時を狙っていたのだ。
軍の暗号様々な伝達手段。敵国は全て承知していた。
既に幾つもの戦艦が沈められている。それでも送兵のためにやらざるを得なかったのだ。
戦艦はすぐに逃げの態勢をとった。訓練でもしているのか、それはすさまじい速さで行われ、辛うじて逃げおおせたらしかった。
取り残された孝一達に、B29は容赦のない攻撃を浴びせた。
戦艦を取り逃がしてよっぽど悔しいのか、それは凄まじいものだった。
孝一の目の前で戦友達が次々と死んでいく。
断末魔の声は船の中で渦巻き、海に次々と沈んでいく。
孝一自身、かなりの深傷を負っていた。
孝一は無我夢中で船の残骸にしがみ付き、必死で泳いだ。
海水で傷口が沁みる。それは想像を絶する痛みだった。
七転八倒し、時々気が遠くなる。負けてしまいそうになる。そんな時決まって、八重子の声が聞こえた。
孝一はその度、勇気とやる気を奮い起こし闇の海と戦った。
岸に着いた時、きっと孝一は激痛の原因を知る。
孝一の左腕は失われていたのだ。
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