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その一 わたくし、深緑と申します! いちおう天女です、半人前ですが……。
―― グルギュルグル……ギュルウウウーンッ……。
な、何? 何なの? このおかしな音?
わ、わたしの体の中から聞こえましたよね!?
えっ? ど、どうなっちゃったの、わたし!?
草の上に尻餅をついたまま、わたしは、自分のお腹にこわごわ手をやった。
腰に下げた虫籠の蓋が開き、小さな青蛙が顔を出すと、訳知り顔で言った。
「おうおう、派手に腹の虫が鳴ったのう!? 深緑! おぬし、どうやら無事に下天して、『人間』になれたようじゃぞ!」
「ここが、人間界ってことですか? 下天井に入ったと思ったら、何だか目眩がして、気づいたらここに座っていたのですが……」
「初めての下天じゃからな。そんなものじゃろう。ささ、これ以上腹の虫が暴れる前に、立ち上がり旅を始めるのじゃ!」
「は、はい……」
はあ……、本当に、人間界へ来てしまった……。
わたし、もう一度、天界へ戻ることはできるかしら?
まあ、戻りたかったら、ひたすらお務めに励むしかないわよね。そもそも、自分で「撒いた種」なのだから――。
風に揺れる草原を眺めながら、わたしは、二日前のことを思い出していた――。
* * *
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