その一 わたくし、深緑と申します! いちおう天女です、半人前ですが……。

1/4
43人が本棚に入れています
本棚に追加
/110ページ

その一 わたくし、深緑と申します! いちおう天女です、半人前ですが……。

 ―― グルギュルグル……ギュルウウウーンッ……。  な、何? 何なの? このおかしな音?  わ、わたしの体の中から聞こえましたよね!?  えっ? ど、どうなっちゃったの、わたし!?  草の上に尻餅をついたまま、わたしは、自分のお腹にこわごわ手をやった。  腰に下げた虫籠の蓋が開き、小さな青蛙が顔を出すと、訳知り顔で言った。 「おうおう、派手に腹の虫が鳴ったのう!? 深緑(シェンリュ)! おぬし、どうやら無事に下天して、『人間』になれたようじゃぞ!」 「ここが、人間界ってことですか? 下天井(げてんい)に入ったと思ったら、何だか目眩がして、気づいたらここに座っていたのですが……」 「初めての下天じゃからな。そんなものじゃろう。ささ、これ以上腹の虫が暴れる前に、立ち上がり旅を始めるのじゃ!」 「は、はい……」  はあ……、本当に、人間界へ来てしまった……。  わたし、もう一度、天界へ戻ることはできるかしら?   まあ、戻りたかったら、ひたすらお務めに励むしかないわよね。そもそも、自分で「撒いた種」なのだから――。  風に揺れる草原を眺めながら、わたしは、二日前のことを思い出していた――。  * * *
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!