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01. 彼女はアンフレンドリー
外は真夏の太陽が容赦なく熱を放出する中、ランチタイムを終えたオフィス内では、冷房がフル稼働していて快適に過ごせている。
「失礼します……!」
しかし、営業の仕事を始めて二年目となる男性社員の小山は、印刷したばかりの戦略資料を片手に、少しだけ背筋に寒気を感じていた。
なぜなら教育担当だった先輩の指示で、今から営業企画の冴木美琴を訪ねなくてはいけなかったから。
「さっ冴木さん、お忙しいところすみません!」
「……小山くん?」
企画部にお邪魔して、緊張を誤魔化すようにハキハキ声で名前を呼ぶと、椅子に座ったまま体を半転させる美琴のポーカーフェイスと目が合った。
肩まで伸びた艶やかなダークブラウンの髪がさらりと揺れて、その綺麗な姿勢と外見に小山の胸が控えめに鳴る。
「っ……!」
「何か?」
「あ、えーと」
今の時点では普通に接してくれる美琴に一瞬ホッとするも、これから話す内容が内容なだけに、なるべく穏便に事を運ぼうと先ずは御礼から述べた。
「次回に使用する戦略資料、作成していただきありがとうございます! それであの……」
「どこかミスでも?」
「いいえ、ただ香上さんが、この資料の数字じゃ取引先が納得しないって言っていましてですね……」
「……香上くんが?」
その名前を聞いた瞬間、美琴は綺麗で物静かな表情を歪ませ、明らかに不機嫌なオーラを放ち始めた。
部署は違えど共に仕事を進めている美琴が急に不機嫌になれば、後輩の小山も簡単に青ざめる。
そんな場面を、遠くのデスクから見つめる女性社員達は、口を揃えて。
「わ、また無愛想の美琴サマが小山くんに圧かけてるよ……」
「一緒に組んで仕事する後輩にも冷たい態度とるんだね、冴木さんて」
部署内ではもう名物になりつつある、冴木美琴の冷淡で無愛想な人柄と態度。
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