11. 守りたい笑顔

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11. 守りたい笑顔

 月日が流れるのは早く、ついこの間12月に突入したばかりだと思っていたのに。  本日、平日ど真ん中のクリスマスイブを迎えている社内は、定時に仕事を終わらせようとする社員達で空気がピリピリしていた。 「香上さ〜ん! 助けてください〜!」  すると、どう頑張っても定時までに仕事を終えられないと悟った小山が、先輩である蒼太の腕に泣きついている。  しかしそんな小山には目も向けず、キーボードを素早く打ち続け自分の作業を淡々と片付けていく蒼太は。 「小山、今日は何の日だ?」 「……イブです」 「そう、だから今日だけは助けられない。己の力で頑張れ」 「そんなぁ〜納期今日までなんすよコレ〜」  小山の嘆きは蒼太の耳を通り抜け、相手をしてもらえない。  恋人がいる先輩はすっかりイベントを重視する人間になってしまい、恋人のいない小山は少し悲しさを覚えていた。  ただ、今までフリーという方が嘘だ変だと思っていた蒼太が、意外と恋人優先主義という発見もあり。  しかもその恋人というのが“無愛想の冴木”で知られる、あの美琴ということもかなり驚いた情報の一つ。 「(今思えば、冴木さんに冷たい態度されてもお構いなしに絡みに行ってたし……)」  大した用事でもないのに、わざわざデスクまで足を運んだり。  通路ですれ違う時は自分との会話を中断してでも、必ず美琴に声をかけていた。  だからきっと、今日のクリスマスイブは蒼太にとって特別であることも重々承知しているから。 「そうだ! 冴木さんも呼んでみんなで作業しッイタイ!」 「小山バカなの?」  ありえない提案を口にした小山の頭のツボをグッと押して登場した下田が、蒼太と共に進めていた業務の完了報告をする為にやってきた。  それと、これ以上後輩が失礼をしないように、という意味も込めて。
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