初めての快感を教えてくれた彼は…

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ベッドで余韻に浸っていた私はハッと思い出し飛び起きた。 「お金!」 枕元にキレイに畳んであったスカートを広げ座ったまま足を入れる。そしてウェストのゴムの部分を持つと一気に腰まで引っ張り上げた。 ベッドから飛び降り、テーブルの上においてあるカバンの中に手を入れて封筒を取り出した。 自慢のサラサラ黒髪を耳にかけ、 「あの、今日は、ありがとうございました!初めての感覚で、感動してます。」 と、満ち足りた私は長々とお礼を言い、 ベッドに上半身裸で腰掛けるケイという男に渡した。 「…あ、どうも。」 ケイは一瞬目を大きくしたが律儀にお辞儀をしながら受け取った。 ーーーーーーーーーー ケイと素敵な時間を過ごしたのが昨日。 今日は同じ印刷会社に勤める同僚であり友人でもある沙奈と会うためにカフェに来ている。 「え!!瑞子ってば本当にしたの?!女性用の?!」 「ちょ、声でかいよ!」 沙奈の口を手で覆うが今更遅い。迷惑そうな顔でこちらを見ている人が何人かいる。 周りの視線を気にしつつ、小声でさきほどまでの出来事を話した。 「へーそんなに良かったんだ。そこまで聞くと興味湧いちゃうな〜」 「でしょでしょ!」 どうにかして沙奈にも体験してほしい気持ちが強くなり、話しながらどんどん前かがみになっていく。 「けどさ、やっぱり彼氏のこと裏切れないわ」 腕組みし、眉間にしわを寄せながら沙奈は言った。 「彼氏か…。」 そうか、沙奈は彼氏との関係に不満がないからか、と自分の中で処理する。 「瑞子も竹内くんいるじゃん。あんまり上手じゃないとか?」 悪気なく言ったであろう沙奈の言葉が私の何かを壊した。 涙がとめどなく溢れてくる。悲しい気持ちが、蛇口を捻ったようにどんどん溢れてくるのだ。 「あ、ごめん。大丈夫?」 沙奈は慌てて私にハンカチを寄越し頭を撫でる。「落ち着くまで待ってるからさ。安心して。」 その言葉を聞き涙はさらに流れるのだった。沙奈の優しいところ、好きだ。 涙が落ち着いたら話そう。 最近ずっと悩んでいた、彼氏の竹内との関係。 「急に泣いてごめん。」鼻をすすりながら沙奈にきちんと向き直る。 「いいよ。ケーキ食べてたし。」 言葉通り、沙奈は追加で頼んだケーキを2個食べ終わろうとしていた。残った倒れかけのケーキを見つめながら重たい口を開く。 「竹内くんとは、そもそも相性があまり良くないかなって感じてたの。私、あんまり気持ちいいとは思えなくて…それにあんまり濡れないから痛いし。濡れないのは私の体に何かあるからなのかなって。」 「え、そうだったの?」 ケーキを食べる手を休める沙奈。 「それに最近竹内くんと会えてないし、私が感じにくいのかな〜とかもよく分からなくて。けど浮気とかできないし、そもそもそんな相手いないし… でまあ、調べてたら出てきたので…今回利用してみたわけですよ。」 声に出していくうちに恥ずかしくなり敬語混じりの口調でだんだんと視線が下がる。 すると、 「そんな事とはつゆ知らず…ごめんね。そうだよね。うん、大事なことだよ。きちんと確かめたんだもんね。私みたいに別にいっか、で済ませないで向き合ったわけだ。」 沙奈は私の手を取りまっすぐこちらを見た。 また、泣きそうだ。唇を噛み震えを抑える。 が、 「で、やっぱり竹内くんが下手なだけだったと!」 先程まで感動的な雰囲気だったものがガラリと変わり、沙奈はニヤリと笑う。 「え、沙奈?」私まで涙が引っ込み、下を向き肩を小刻みに震わす沙奈を見てつい、笑いが出てしまった。 「ふふ。そうなるね!」 「はぁ〜、笑ってごめん。けど、竹内くんには利用したこと、バレないようにね。プライド高いから。」 「うん。もちろん。」 二人目を合わせると、 「ぷっ。あっははは」ほぼ同時に笑い出した。久しぶりに声を出して笑ったかもしれない。 「あ、そういえば瑞子、アレ持ってきてくれた?」 目の縁に貯まる涙を拭き、遠慮気味に聞いてくる沙奈の言葉にアレの存在を思い出す。 「はい、生産者瑞子のお野菜たちだよ。」 丁寧に袋に入れた野菜たちを手渡し、 先程の涙が嘘のように明るい声で言う。 実家が農家で小さな頃からよく家の手伝いをしていた。 進学とともに実家を離れた為、今では自宅アパート近所の農地を借りて瑞子菜園と名付け野菜などを作っている。 私の唯一の楽しみだ。 「ありがとう!いつも助かってます!」 「いいよ。自分が作った野菜誰かに食べてもらえるの嬉しいし。」 「このクオリティ!趣味の域超えてるよ。またよろしくお願いします。」 「はい。」 深くお辞儀したあと、また目が合い二人は声を出して笑った。 私と竹内、沙奈はそれぞれ所属は違うものの同期入社の同い年、27歳。 中小企業のため同期はさほど多くないが、入社時研修からずっと仲の良い3人だ。 2年前から竹内と付き合い始めてからもたまに3人で集まったりする。 ただ竹内はプライドが高く仕事一筋だ。利用したことは、絶対にバレないようにしなければ! 「本当、竹内くんに会ってないよねぇ〜うん。まあ、会えなくても死にゃあしないんだけど。」 他人事のようにこぼすと、ラテの入ったカップを取り一口飲んだ。 ーーーーーーーーー 「え、何知り合い?」 カジュアルな服装に爽やかな短髪。誰が見てもイケメンな竹内。 その竹内がちょっとした疑問を聞くようにこちらをじっと見つめる。 私は隣りにいる男性をもう一度見た。 180はある細見の体、サラサラの黒髪にセンターパート 金縁の丸メガネから見える涼しい目元…………。 あの時メガネはかけていなかったものの、 やっぱりケイだ! けれど何でここに!? 頼まれ事があったからシステム課に訪れただけなのに、 あわよくば竹内の顔が見れたら、 ついでにお話まで出来たらな〜なんて 思っていたのに…。 何度見てもやはりあの日の女性用風俗店のスタッフ、ケイがいる!! 今は竹内よりもケイだ! 一体ケイは何者?!なぜシステム課にいる?! と、 そんなことは今はどうでもいい。竹内に利用が知られなければそれでいい。知らないと答えるのが良いだろう。 ここまでの脳内会議で0.2秒。 「「知らない」っすよ。」 言葉がかぶり思わずケイを見る。 ケイは先程から変わらない真顔だった。 本当は別人だったのだろうか。 眉毛一つ動かさないとはやはり知らない、か、覚えていないかのどちらかだ。 だが、これ以上考えても何も得られるものはないので思考を停止。 用事も済んだのでシステム課をあとにしようと足を一歩下げた時、 「そういえば、瑞子は社内コンペ応募するの?」 竹内が話しかけてきた。 「え?」 「前に同期飲みした時、アイディア浮かんだとか言ってたじゃん。」 「あ〜うん。」 久々の竹内との会話でスムーズに受け答えする事ができずに勝手にギクシャクしてしまう。 が、確かに前に沙奈と竹内に話した事がある。 その時、竹内の反応は確か… 「所詮総務課でぬるい仕事してる奴が考えるアイディアなんだから通らねえって。瑞子は傷つきやすいんだから応募なんて辞めとけ。」 「あ、うん。」 全くあの時と同じ事を言っている竹内。それに同じく応える私。 その場の空気と私の心が重たくなるのが分かった。 そして早くこの場を去りたいと、竹内らにお礼を言い、さっさと我が家である総務課へと向かう。 「アイツ総務課のことバカにしてますよね!許せない!俺は応援しますから!社内コンペ。」 「へ?あっ、ありがとう。」 そういえば、と、一緒に連れ出しずっと隣りにいた後輩サガミの存在を思い出した。 せっかく竹内に会えたというのにとんでもないことになってしまった。 企画をしたり開発などをするシステム課からすれば、総務課はそう見えるのかもしれない。 正直に言うと、「だから」この部署を選んだというのはある。 将来結婚するかもしれない、子供が生まれるかもしれない、 その時に仕事に戻りやすく、極力周りに迷惑をかけずに済む職種。 そして趣味の菜園を無理なく続けられる勤務形態。 新しいことにどんどんチャレンジしていく竹内とは反対に私は保守的になっているな、と感じてしまう。 「けどその後ろにいた子めちゃくちゃ可愛いかったですね〜 システム課にあんな可愛い子ちゃんがいたとは。新人っぽかったし俺と同期かな。知らなかったな。よし、通い詰めよう。」 「そんな子いたんだ。同期なら尚更仲良くしておかないとね。」 雰囲気にお構いなしのサガミ。彼の独り言には適当に相槌して流す。 しかしこんな後輩でも応援する、と言ってくれたのは嬉しかった。 すると、後ろからパタパタと走る足音。 何事だろうかと振り返ると、そこにはケイが。 「?」何かあったのか?と首を傾げていると追いついたケイは私の前に立ち止まると周りを見た。つられて私も見る。 廊下にはまばらに人がおり、話し込んでいそうな人たちもいた。 ケイは声を潜めて 「屋上にいいっすか。」 と一言。 私はケイが指差す方を見上げた。なぜ屋上…? 「はあ…。」うんとも言えないようなハッキリとしない返事をすると、先にサガミを戻らせる。サガミが変な噂を立てぬよう、ケイに可愛い子ちゃんの連絡先を教えてもらう事を約束し、私はトイレに行っていることにしてもらうようにした。戻っていくサガミの背中を見届けると、階段を上がるケイの後を小走りでついていく。 「この前のお客さんですよね。」屋上に着くなりケイは振り返りながら言った。ガチャンと重厚な扉が閉まる。 「え?あ、あなたやっぱり!!」 「あれ、副業なんです。恥ずかしながらそういった経験なくて。それに自由度高いから本業を疎かにしないし。けど、副業の内容まではみんな知らないから、誰にも言わないでほしいんです。」 顔の前で手を合わせるケイを見て、なんだ、と少しだけホッとした。 「あぁ、そうなんだ。実は私も…竹内くんが彼氏なんだけど、利用したことはバレたくないの。」 「……あーなるほど。なら、お互いバラさないってことで。」一瞬きまり悪そうな顔をしたがすぐに真顔になり 手を差し出すケイ。交渉成立の握手かな、とその手を握る。 細くゴツゴツした指にすべすべな肌を感じ、ふとあの日のことを思い出してしまった。この手に私は………。 「ふふっ。顔、赤いですよ。」気づいたケイは顔を覗き込みいたずらな顔でそう言った。 「こ、これは!」言い終わる前にケイが続ける。「実は俺、あなたの事が忘れられないんですよね。せっかく同じ会社にいる事だし、また、しましょうよ。竹内さんなんて忘れて。」 唇と唇が触れそうなぐらいの距離にあるケイの顔。心臓が飛び出そうなほどドキドキと鳴っている。けれど、不思議と嫌ではなかった。あの時のケイがこんなに近くにいるなんて。優しく言葉をかけられるだけであの日を思い出し体が疼いた。 「シタ時のこと思い出してくれた?」 ケイは微笑むと私の胸を下からすくうように揉み始めた。 「あっ。」 思わず声が漏れる。私は反射的に自分の手で口を抑えた。 「俺もあの時の事思い出してるよ。」 耳元で吐息がかかり、色気のある声で囁かれると足の力が抜けそうになる。 今度は反対の手でお尻を優しく揉みしだき始めた。 「どこ触って、はあんっ!」 お尻をもみながら足の間に手を入れる。 すると密が溢れ出す敏感な場所にもと指を滑らせたので大きく喘いでしまった。 跳ねのけたいのに…ケイの手を止めることが出来ない。 なぜなら、気持ちいいと知っているから。 しかし、そこで着信音がなる。 ケイにかかってきているようだった。 すると急に、ケイの体が離れる。 「あっ。」 「ヘルプか…残念。今日はここまでですね。じゃ!」 そう言うと、そのまま早足で出口へと向かっていくので急いで声をかけた。 「あの!名前は?」「伊都。」振り向きざまにそう言うと、疼きが収まらない私を残し伊都は行ってしまった。 伊都の後ろ姿にドキドキしている。 そしてぽつんと立ち尽くしたまま、先程までの事を思い返した。 「だ、ダメ!私には竹内くんが!…けど名前本当は伊都っていうんだ…」顔が熱くなるのが分かり手で顔を覆った。「伊都…くん。」名前を呼ぶとケイにしてもらったことやかけられた言葉を思いだし余計に熱くなる。 「あ!!じゃなくて可愛い子ちゃん!!!」 急にサガミの顔を思い出し一瞬にして体の疼きと熱が冷める。 扉を開け階段を駆け下りたが、もう伊都の姿はなかった。 ーーーーーーーーーーーー 「瑞子先輩ありがとうございます!さすが!」 隣に座るサガミが小声で言いながら頭を下げる。 「ま、まあね。本人にも直接話せたから気兼ねなく連絡取るといいよ。」 「そうなんすか!分かりました。」 デスクに向き直ると早速メッセージを送っているのかスマホを手に何やら操作するサガミ。 今は就業中だぞ、と思いながらも仕事をほぼほぼ捌き終わっているサガミには何も言えない。 それに伊都から直接聞けなかった後ろめたさもある。 ただ、運が良かった。 あの後、どうしようかと思っていたところにたまたま竹内に会い、その後ろからひょっこりと現れたご本人に直接聞き出したのだ。 本人は少し困ったような、迷った表情をしたが、 「お前はボッチなんだから、横のつながりも大事にしろ。」 竹内の先輩らしい一言で連絡先を入手することができたのだった。 「ふぅ〜」 彼氏である竹内と会えたことは嬉しいはずなのにどうも心から喜べない。 むしろ気を遣って疲れてしまった。 竹内はあんなに嫌味っぽく言うような人だっただろうか?そんな事まで考えている私がいた。 けれどとりあえずは伊都とも話せたし、 風俗利用のことは解決した?よね。 ただ、竹内への心境の変化が少し気になるが。 今は一旦置いておくことにする。 濃い1日だった為やり切った感が出てしまう。 周りの目も気にせず思い切り伸びをしたがその瞬間に電話が鳴り、焦った私は勢いよく受話器を取った。 「はい。多田野印刷株式会社です。」 ーーーーーーーーーー 就業終了後。 外に出ると伊都がリュックを背負って歩いていく後ろ姿が見えた。 姿を見ただけでドキッとしている自分に気づく。 忘れなければ。何もかも。 頭を横に振り頭をリセットする。 「そうだ。」 思い出したように肩にかけたカバンからスマホを取り出し操作する。 この時間に伊都が帰っていくのならもうシステム課も終わってるという事。最近プライベートで会えていなかった竹内にメッセージを入れてみる。 すると、すぐに返事がきた。 ドキドキしながらメッセージアプリを開く。 最初の短文で嫌な胸騒ぎを感じ、 内容を読んで、心がズンと重たくなるのがわかった。 「伊都くんはもう帰ってるのに竹内くんはまだ仕事終わらないの?」 画面に向かって一人話しかける。 残業をするため今日も会えないという内容だった。 ここ最近ずっとだ、もう一ヶ月になろうとしている。 だが、自分からメッセージを入れたはずなのに竹内からの返信に何故かホッとしていた。 一体何なんだろう。とにかく会えないことは残念だな、と、スマホを持つ手が力なくだらんと垂れた。 きっと竹内は責任ある立場で教育係にもなっているため遅くなってしまうのはあるのだろう。実際に竹内は一昨年から4月入社の新人教育係になっている。確かにその頃から帰宅が遅くなることが多くなったのだ。それに加え社内のDX推進も始まり同時進行の案件を抱えている。一ヶ月も会えないのは初めてだが、今回も仕方ないだろう。 伊都が進んだ方とは反対の道をゆっくりと歩きながら、前向きに考えよう、と思うことにした。 そして、 仕方ないだろう。と思ったのが3日前。 あれ以来竹内からは返信すらない。 システム課に用事なんてそうあるものでもないのでなかなか就業中に会うのは難しい。 ただ、たまに遅くなった日などは伊都の姿を見かけるようになった。後ろ姿だけだが、見るだけでドキドキと心臓が高鳴った。 そんな日は菜園に行き収穫、次の日は早朝から手入れをしに行って心を落ち着かせた。 ーーーーーーーーーー そして、本日の業務は営業課のサポート。 私は同課のエースである沙奈のサポートをしていた。 「ねえ、竹内くんと別れた?」 「え?!」 昼休憩中、近くの定食屋さんで唐突に沙奈が言った。 「何でそんなこと言うの?別れてないよ!」 確かに最近プライベートでは会えていないし連絡もないがそこまで言うのか?とムキになる。 「え!?ごめん。……けどなあ〜」 沙奈は目を見開いたが、すぐに腕を組んで眉間にシワをよせた。私を気遣っているのか言おうか言わまいか迷っているらしい。 「言って大丈夫。」 最近連絡もないので困っていたところだ。 なぜそんな話になるのか純粋に聞きたかった。 観念したように沙奈は低いトーンで話し始めた。 「うん。あのね、別れてないなら、竹内くん浮気してるよ。」 「…は?」 浮気。今まで自分には無関係だと思っていたワード。よりによって竹内が? 確かにイケメンで狙う女子も多いが仕事一筋で付け入る隙がない人だ。 いつも熱心で、どんな状況でも真剣に取り組む姿勢を崩さない。そんなところに惹かれ、サポートをしていく、と告白して付き合ったのだ。 竹内の仕事への熱量を理解できるのは私ぐらい…と、 ここまで巡らせてからハッとする。 「誰?相手。」 私の他に竹内を理解できる人がいたというのか… 沙奈は申し訳無さそうに言った。 「同じシステム課の新人の子。ホテルに行くところ一昨日の前の日見ちゃって。営業の他の奴らも夜、外回りから直帰するときに二人が竹内のマンションに入るところ見たって…」 「あー…なるほど。」 全身の力が抜け背もたれにもたれかかる。 途中から沙奈の言葉が頭に入らなかった。 一点を見つめこれまでのことをよく思い返す。 システム課の新人の子だというのは理解した。確かに竹内はよく気にかけているようだった、新人の子も懐いている様子だった。 最近会えていなかったし、返信すらなくなっていた。 なんなら私へ嫌味のような事もよく言っていた。 竹内の気持ちはとっくに離れていたのに、私は気づけなかったのか。 「瑞子!!ごめん、今話すべきじゃなかった」 慌てたように沙奈はハンカチを差し出す まだ、涙なんて流していないのに。 「だ、大丈夫。ありがとう。あ〜、今思えばなるほどな、って合点行くかも。」 何て平和ボケした頭をしていたのだろうか私は。 私以外に竹内を理解し支えられる人はいないだろうと勝手に思い上がっていた。 と、スマホに竹内からのメッセージが。 こんなタイミングで、と思いながらもやはり、ドキドキしてしまう。 全文を読めるように開くと たくさんの空白の後、『俺に瑞子は釣り合わない。ただサポートされるだけでは俺の支えにはならないと気づいた。俺と対等な位置にいれる人と出会った。別れてほしい。』だった。 「あ、文字が…」 霞んで見えない。涙が邪魔をして文字が読めない。 だが、流すまいとまぶたを開けたまま唇を噛みしめる。 「瑞子…」 「私は竹内くんと対等じゃなかったんだね」 いざ口にしてみると実感が湧いてしまいとうとう涙が溢れ出した。 そんな風に思われていたのだと。 「分かりました。別れましょう。っと」 文章をうち込み送信ボタンを押した。 すぐに既読になったがその後返事は来なかった。 2年間があっけなく終わった。 ここで、なぜなのかと問い詰めたり、会って話したいと言ったところで竹内の心が戻ることはないだろうと思ったので特に何も言わなかった。 「はあ、あっさり…」 「しすぎでしょ。完全に浮気じゃん!!何で何も言わないの?!分かりましたじゃないよ!」 前のめりで大きな声を出す沙奈。 「もういいの。私以上の理解者がそばにいたんだよ。竹内くんの気持ちにも気づけなかったなんて、それまでの関係だったんだね。」 「そんな事ないって。」 「いいの!竹内くんからのメッセージの内容にちょっと傷ついてはいるけど…実を言うとね、ホッとしてる」 「え?」 沙奈は困ったような表情をしている 「最近冷たいし、総務課の事悪く言うしいい気持ちしなかったもの。」 「そっか、やっと気づいたんだな!」 先程までの困ったような表情はどこへ行ったのか? 今度は安心したような表情へと変わっていた。 「けどまあ、楽しかったことが無いわけじゃないから。悲しい気持ちもあるんだけどね。今はそんな事言ってる場合じゃないから!さっ!ご飯食べよう!!」 「…そうだね。」 明るく、力強く言うと、沙奈は気になっている様子だったがもう竹内の話はしなくなった。 帰ってからでも泣くことはできる。 確かに裏切られていたのは悲しい。 けれど、きっと竹内にとって私は最良のパートナーではなかったのだろう。 不思議と酷いことをされたという認識にはならなかった。 今日は営業課のサポートをする日で良かったと心から思う。 外回りしながら校正や期限の確認など、 時間があっという間にすぎるので竹内のことを忘れることができたからだ。 「沙奈、お先にあがらせてもらうね。お疲れ様。」 「瑞子!今日はサポートありがとう!…ごめんね、夜ご飯でもって思ったけどまだ私整理終わってなくて」 申し訳無さそうに言う沙奈の机の上には 山積みになった書類。 営業は外で営業するだけが仕事なわけではないのだ。 沙奈にしか、営業課の人にしか処理できない書類。 何故か罪悪感がわく。 「大丈夫だよ。また誘って!」 「うん!ありがとう。お疲れ」 「お疲れ」 手を振りその場をあとにした。 帰宅中の電車の中でも、部屋についてからも、 乱すことはなく、心は落ち着いていた。というより無になっていた。 一ヶ月もまともに連絡が取れていなかったせいか 涙は流れなかった。 部屋に飾ってある竹内との写真もいつの間にかホコリを被っている。 「後ででいっか…ふふっ、私あんまり好きじゃなかったのかな?」 別れに納得行かない、別れるなんて悲しすぎる、 こんなにたくさん思い出があるのに、 という悲しさの気持ちはほとんどない。 もしかしたらそんなに好きじゃなかったのかもしれないと思ってしまうほど…。 思い出の整理は後回し。   ベッドに倒れ込むと、しばらく動けず。 やはり涙は出ずともメンタルにはきているらしい。 体が重たく感じる。 好きだと毎日言っていた頃もあった、好みを合わせることもあった、苦手な料理を練習しまくった頃も…。瞼の裏に笑顔の竹内が浮かぶ。思い出していくとやはり、笑い合えた日々もあったのだなとしみじみ感じた。 せめて、もう少し仕事が忙しければ今回のこともあっという間に忘れてしまえるのに…。 総務課ではなかなか敵わない希望を頭の中に描く。 営業課の沙奈も、システム課の竹内も毎日のように忙しくしている。 忙しいと嘆きながらもキラキラ輝いて見えるのは私だけなんだろうか。 私は、…今のままでいいのか…? 毎日代わり映えのない仕事内容、たまに営業のサポートをしていると感じる仕事のスキルの高低差。 竹内の言うことは心に引っかかりながらも、多少は合っているのかもしれない…。 せめて何か役に立つスキルアップを、と考えているうちに 段々と瞼が下がってきて、 ついウトウト…。 そして、口元を何かが伝う感覚で目が覚めた。 「はっ!寝てた!」 体を起こすと 頬にまで垂れてきたヨダレを肩で拭いた。 メールの通知音が鳴っているのでいつも持ち歩くカバンを漁りスマホを取り出す。 メールフォルダを開くと、以前のメールのやり取りが目に入った。 「ケイくん…じゃなくて伊都くん。つってもやり取りはお店か。」 予約した際のやり取りのメールが残っていたのだ。 それを見ただけで、また伊都の事を思い出し体が疼き熱くなる。 私は思わず片手を胸に伸ばした。 竹内ともしばらく会えていなかったので3ヶ月はしていない。 また、利用してみる? 一応は迷ったが、答えを出すのに時間はかからなかった。 「ま、もう彼氏いないしいいよね…けど伊都くんは流石になあ。」 またしようとは言われたものの 流石に会社の人とは、という気持ちが強くなり 同じお店の違う人を指名し最短で予約する事にした。 ーーーーーーーーーーーー 「瑞子!よお!」 「あ、沙奈。」 昼休憩中、お昼を済ませ廊下を歩いていると後ろから声をかけられた。 「何か甘いの欲しくない?」 ニヤリと笑う沙奈。 「欲しい!」 私は即答えた。 ____ 「へ!?また!?」 「うん。」 コーヒーをこぼしそうになりながら驚く沙奈に対し返事をしながら優雅にラテを飲む。 「ハマっちゃってる…?」 こちらを指差し恐る恐る言う沙奈。 「それがね、全然なの!」 カチャリと音を立てカップをテーブルにおいた。 「はひ?」 二回目に予約した時の事を事細かにつらつらと話す私をキョトン顔で見てくる。 「そ、それはまあ、相性…かな?」 最後まで話し終わると沙奈はそう言った。 「相性…」 そう。2回目の人は伊都の時ほどの感動がなく快感もなかったのだ。 竹内と別れたばかりだからか? それはきっと違う。キスからして違ったのだ。 伊都の時は軽くキスをしただけでも蕩けてしまい体に力が入らなかったのに今回の人はただベチョベチョに口の周りが濡れただけだった。 思い出すだけで口の周りを拭いたくなる。 「まあ、元気そうで良かったよ。」 「沙奈…。ありがとう。私は大丈夫!」 ガッツポーズをしてみせると沙奈と私は同時に笑った。 「ところでさ、瑞子は社内コンペ応募する?」 「え?」 そういえば、と記憶をたどる。 一つは内容自由。 もう一つはSDGsイベント関連となっていたはず。 期限は…確かもうそろそろだ。 アイディアがない訳ではないが自社での実現は難しいだろうと判断し諦めていたところだ。 竹内にも無理だと言われている。 「前にちょろっと話してたじゃない?瑞子の。」 「あ〜、まあ話したね。」 熱く語ったのが昨日のように思い出され恥ずかしくて仕方ない。 「応募するんでしょ?あれ面白いと思うんだよね!もう他社でもしてるところはいくつかあるけど、自社でも出来たらだいぶ幅広がるし!」 「そうかな…。面倒な事が増えるだけだって。一般向けとか。アプリ開発もしないとだからシステム課の協力もいるし、けど今はDX推進もしてるから人手が足りない。デザインだって決めないといけないし営業課も大変になるよ。」 「そんなことまで考えてんの!?」 沙奈はため息を付き、コーヒーカップをかちゃりと音を立てて置いた。 「アイディア出すだけなんだから気軽に行こうよ!その後のことは採用されてから決めるって!」 「そうだけど…」 ちらっと沙奈の顔を見る。 エースで大活躍、何かと目立つ沙奈には分からないだろう。 縁の下の気持ちなど。 沙奈にもできそうな仕事を毎日何時間もかけてこなしていく。 繰り返し繰り返し毎日だ。 総務課でしか経験できないこともありはするが… 沙奈のように沙奈でなければ出来ない仕事、というわけではない。 「気が向いたら応募する。」 竹内に言われた言葉を思い出すと気持ちは全く進まないが、こうでも言わないと話が終わらなそうなので前向きに返事した。 「うん!ぜひそうして!!」 この時だけは沙奈の自信に溢れた笑顔から目をそらした。 ーーーーーーーーーーーー 時計の針は20時を回ろうとしている。 「え、何これ。全く動かない。」 スキルアップを掲げ、読んでいたパソコン関連の本。 そこから得た知識を全て駆使するもパソコンの画面は暗いままだ。 サガミが体調不良で早退し、サガミと同期の香も休暇を取っていた為二人がいない分を代わりに仕事をすることになったが 溜め込んでいたのか、量が多すぎて残業、もう少しで終わりと言うときのトラブル、周りには誰もいない、という最悪な状況だ。 「どうしよう。これ」 流石に焦り始めてきたその時、 「どうしたんですか?」 後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。 振り返ると、そこには後ろ姿ではない、 こちらを見つめる伊都が…。 廊下の方から、開いた扉にもたれて立っていた。 「伊都…くん」 「はい。何でしょう?ヘルプかな?」 伊都は優しくほほえみながらゆっくり近づいてくる。 「そうです…」 安心したのか涙が目に浮かび力が抜けそうになる。 事情を説明すると、伊都は腕組みし考えだした。 椅子に座ると真剣な表情でパソコンに向かって操作する。 そして、画面が明るくなったと思ったら何やらカタカタと物凄い勢いでキーボードをタッチしている。 こんな顔もするのか、とドキドキしながらじっと見ていると、 ふいに伊都と目が合った。 そして、画面を指さす。 指の先を見ると… パソコンの画面が元に戻っている! 伊都に促されマウスを動かしながらスクロールしてみると 画面が消える前の状態に戻っておりデータも消えずに済んでいた。 思わず伊都の手を取る。 「ありがとう!本当何てお礼したらいいか。ありがとうじゃ足りないぐらいなんだけど。」 顔を見上げると伊都は口の端をあげ、 いたずらな笑みを浮かべていた。 背筋がゾクッとする。 「ふーん。なら、またあの時の続きしましょうよ。」 「!?あ、あの時って…」 伊都の言う【あの時】がケイとして会ったときの【あの時】だとわかり顔が熱くなる。 初めての快感を知った【あの時】。 「あ…」 「ほら、俺の顔よく見て」 顎を掴まれ伊都の顔を強制的に見させられる。 抵抗すれば出来るのに何故か体が言うことを聞かず伊都の透き通るような茶色の瞳から目が離せない。 「あの時のこと思い出して恥ずかしくなっちゃいました?」 「それは…」 距離を縮める伊都から 目をそらそうとするが、 「正直に言ったらご褒美のキスあげるよ」 優しく微笑む伊都には逆らえない状況になる。 時折低音で話すタメ語が何とも言えない。 私はまたあの時の快感が… 欲しい。 ゴクリとつばを飲み込むと緊張して震える声で返事をする。 「お、思い出して、恥ずかしくなりました」 ずるい、そう思いながらも素直に従ってしまった 私は負けたのか? そんな事考える暇もなく、 「よくできたね。」伊都はそう言うと チュっと優しい水音を立てながら唇にキスをした。 優しい、優しいキスなのに色気があってもっと欲しくなる。 「もっと欲しい?」 「そ、そんな事!」 心を読まれた気がして、つい強く拒否する。 が、伊都は構わず胸に手を伸ばすと優しく撫でまわし 下から持ち上げるように揉みしだいた。 「あっ」 完全に疼いた体が伊都を欲する。 「素直じゃないな。まあ…それでもしますけど。」 笑ってそう言うと 伊都は胸を優しく撫でながらキスをする。 チュ、チュパと音を立てながらだんだんと深いキスに変わっていく。 「あっはあっ」 「その蕩けた顔好き…」 唇が離れたかと思ったら艶のある声と目でそう言った。 「はあっんん」 また深いキス。 恥ずかしくなり目をそらすも唇だけは離してもらえなかった。 カチャカチャと何やら下の方から音がする。 が、考える余裕はない。 音がなくなったと同時にスラックスがすらりと足元まで脱げ落ちた。 すかさず伊都の両手がお尻へ。 そしてお尻から太もも、太ももから股へと優しすぎるタッチで手を滑らせていく。 すでにトロトロになった私は抵抗する力もなく。 伊都の長くてゴツゴツした指は下着の上から小さな突起を転がし始めた。 「あっんんっ」 電気が走ったように体をビクつかせる。 「はぁっ、何かもうすでに濡れてますけど。」 唇を離し、伊都は 自身の頭に手をやると、髪をたくし上げた。 なんて色気があるんだろう。 気持ちよさにぼーっとした頭の中にこの言葉が浮かぶ。 すると、伊都は私の体を優しく抱き上げ机の上に座らせた。 足を持ち上げ開脚させると、膝を閉じないようガッチリと腕で押さえつけた。 「あっちょっと、何!?」 急な事に驚きと恥ずかしさが入り混じり動揺を隠せない。 「味見」 ぺろりと下なめずりをすると 股に頭を埋め突起を舌先でチロチロと舐め始めた。 「やっ、ひゃうんっ」 ピリッと電気が全身を走ったような感覚。 少しでも頭を離そうと抵抗するが伊都の力には敵わない。 その間にも伊都は突起をジュルジュルと舐め 指で膣の中を掻き乱す。 するとトロリとした蜜が溢れる。 次第に水音は大きくなり、まるでお漏らしをしたようにビショビショと音を立て周りを濡らした。 だんだんと頭まで痺れ、快楽以外何も考えられなくなった。 離そうと抵抗していた手はいつの間にか もっと、もっと、と伊都の頭をおさえつけていた。 「あんっイイっ気持ちイイっ」 ピチャピチャピチャ グチュグチュぐちゅ 舐める舌の動き、膣を掻き乱す指の動きがだんだんと早くなると全身がゾクゾクしてきた。 「やっあんっ、…ダメダメ〜もうイク〜!」 絶頂と快感が全身に行き渡ると ビクビクっと体が痙攣した。 伊都は顔をあげると膣内を乱していた指を自身の口に入れて舐めて見せた。 「やっぱ美味しい。」 乱れた髪型も気にする様子はなく 上に羽織っていたカーディガンを脱ぐと、私の下半身に掛け、そっと優しく抱きしめてくれた。 そして 「瑞子さん、またしましょうね。」耳元で囁くと体が離れ伊都は出口へと向かう。 彼はそのまま振り返ることなく出て行ってしまった。 その後私はどうやって帰宅したのか記憶がない。 ただ、全身のしびれと名前を呼ばれたときの胸の疼きだけは忘れられなかった。 ーーーーーーーーーーーー 「瑞子先輩!昨日はすみません!ちょっぴりサボってた分まで…全部してくれたんすね、ありがとうございます。」 卓上の書類とパソコンの画面を見たサガミは明るい声で話しかけてくる。 ちょっぴりに対して言い返したくなりつつも気持ちを抑える。 「え?あ、うん。」 まだ鼻声でティッシュBOXを装備しているサガミ。 昨日の夜、サガミが座るその机で伊都と… 思い出すだけで顔が熱くなるのが分かった。 あんなに恥ずかしげもなく自分をさらけ出すなんて… 後になってからはずかしい気持ちが湧き上がる。 まだ社内では会う機会がないからいいものの、 きっと伊都を見たらまた思い出して体が疼いてしまうかもしれない。 そうしているうちにも色気たっぷりの伊都を思い出し下半身が疼いてくる。 「これはまずいよね…」 心の中でつぶやいたつもりだったが声に出てしまう。 「まずいってなんすか!もしやタイプでした!?」 いつも大きな声で騒がしいサガミが珍しく小声で騒ぎ立てる。 「や、独り言。てかタイプって?」 噛み合わない会話を正そうとサガミの顔を見ると 向かい合うサガミは私よりも後ろの、高いところに視線をおいて大人しくなった。 「……」 恐る恐る後ろを振り向くとそこには課長が! 「はっ!!!」声にならない声が出る。 「ごほんっ。朝礼中だが、私は話を続けてもいいかな?」 口に拳を当て咳払いする課長に慌てて頭を下げる。 すっかり朝礼中だということを忘れていた。 そのぐらい伊都が脳内を占めていたのか、と自分でも驚く。 「あ〜、ちょうどいい。大和さん。」 「はいっ!!」 自席に戻ると思いきや、くるりと振り返った課長は低音ボイスで私の名字を呼ぶとニヤリと笑った。 「サガミくんもそろそろ独り立ち出来るだろうし、貝原くんのことよろしく頼むよ。彼は営業も兼ねて勤務してもらう予定だが、まずは総務課で職務内容を教えてやってくれ。その後営業に席を移すから。」 「「えっ」」 珍しくサガミと声がかぶる。 課長の隣には貝原と呼ばれた男が立っていた。 中途で入社してきたのだそうだ。 この時期に? 「よろしくお願いします。」 「こちらこそ。」 爽やかに笑った貝原に合わせこちらも笑顔で返した。 しかし中途採用とは言え、あとに営業に席を移すとなると… 結構仕事ができる人なのかな、総務課の在り方が変わろうとしているのかな、と考えを巡らせてしまう。 私も、このままではいけないかもしれない。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 「あれ、中途の新人さん?」 「沙奈!」 昼休憩中。 社員食堂に総務課何人かで貝原を囲い昼食を取っていると久々に見知った顔が現れる。 「こちら貝原さん。」 「貝原です。」 紹介すると貝原は箸を置き、沙奈にお辞儀をした。 「え、めちゃくちゃイケメン。」 「俺の事っすか?」 サガミの座っていた椅子がガタリと動き体を前のめりにして言う。 「ごめん。サガミもイケメンだけどタイプじゃない。」 真顔で答える沙奈にサガミは心折れたのか大人しく座り直しご飯を食べ始めた。 「営業に来るの楽しみにしてるわ!今のうちにビシバシ瑞子に鍛えてもらってね!じゃ、もう行かないとだから。またね〜」 「ありがとうございます。」 資料を脇に抱えながら空になったトレイを持つ沙奈。 本日も忙しいのだろう。強い風でも吹いたかのようにさっさと行ってしまった。 爽やかに笑う貝原は嫌な顔一つせずにやり過ごす。 そんな貝原の横顔を見つめると思いの外まつげが長いことに気付く。 目も大きく二重がハッキリとしていて、鼻も高くて、まるで… そこまで頭を巡らせているとパチッと貝原と目が合った。 ハッとしていると貝原の手が伸びてくる。 「?!」 何を!?と反射的にまぶたを閉じる。 前髪がサラリと動いたかと思うと 「取れましたよ。」 貝原の声。 「あ、ゴミか。ありがとう。」 恥ずかしい… 私は一体何をされると思っていたのか。 「いえ。」 「あ、貝原くんて鼻高いし目も凄くぱっちりしててよく見たらた青っぽい?綺麗だね。」 その後もまだ見つめてくる貝原の視線に耐えらなくなりペラペラと話し始める。 「大和さんの方が綺麗ですよ。」 「へ?!」 「ちょいちょい〜瑞子先輩の事くどくの辞めて下さい。みんなの先輩ですからね〜」 唐突な言葉にすぐに返事できずにいるとサガミが間に入ってくる。 まるでお姉ちゃんを取られた弟のように頬を膨らませた顔で貝原を牽制する。 初めてサガミが可愛い後輩だと思えたかもしれない。 と、ガシャンと荒く目の前にトレイが置かれた。 驚きつつも目の前に立つ人を見上げると 伊都が真顔で立っていた。 「何で…!?」 声に出すと伊都は顔に貼ったような薄っぺらい笑みを浮かべ 「ここ社員食堂。俺も社員ですから。」とイライラ気味に言った。 「あ、それもそうだね。」 「一緒にいいですか?」 「え?うん。いいよね?」 周りに聞いてみると皆、頭を縦に振り頷く。 それを確認した後、椅子を下げ座るなり 「そういえば、ウチの小鳥遊がサガミくんのこと心配してた。昼に総務課覗いてこようかなって言ってたけど会えた?」 スプーンでグラタンをつつきながらサガミをチラリと見た。 本日の日替わりメニューだ。 サガミはコップに残る氷を口に入れようとするのを止める。 「へ!?!?会ってないです!俺を心配して?!」 驚いているが喜んでいるようにも見える。 どうやら竹内の今の彼女に紹介された女の子らしい。 「ちょっと、俺行ってくるっす。お先、失礼します。」 席を立つと、サガミは行ってしまった。 と、伊都がジロリと貝原を見る。 「俺明日から出張なんですよね。意味わかんない勉強会とかまぁ、ちゃんとした仕事もあるけど何か色々あって…」 「え、あ、そう?」 視線は貝原のままに声だけで話しかけてくるのでどう反応していいのか分からず なぜか疑問形で返してしまう。 「いろいろ立て込んでてしばらく忙しくて。」 やっと視線があったかと思うと嬉しくはない知らせ そうなんだ… うつむき、 残念がっている自分に驚く。 「そう言うことなんで、じゃ。」 「えっ!え?」 何も手を付けずにトレイを持って行ってしまった。 一体何しに来たのか。 しばらく会えないというお知らせだったのは分かる。 ならもう少し一緒に、せめてご飯を食べ終わるまでいたらいいのに…と悲しい気持ちになる。 「彼、システム課の人たちかな?そこのテーブルにいますよ。こんな時にもミーティングしてる。本当に忙しいみたいですね。」 貝原が指差す方を見ると確かに伊都は上司らしき人たちと食べながら、タブレットを囲いながら何やら話している。 「ふぅ…」 「大丈夫です?」 「う、うん。ご飯ちゃんと食べてて良かったよ。」 なぜかお母さん視点で答えてしまう。 「彼氏ですか?」 「え?!さっきの人!?いや、ち、違うよ!」 ドキリとして思わずシドロモドロに答える 違う、よね? あんな事してるくせに関係性がはっきりしていない もどかしいようにも思えるが伊都はそれ以上はしてこないし求めても来ない。 ただ、副業の延長なのだろうか。 私は一体伊都にとって何なのか。 伊都は私にとって………、 ここまで考え頭を振る。 隣でカチャリと箸を置く音が聞こえた。 「ごちそうさまでした。午後からもよろしくお願いします。」 「あ、うん。ごちそうさまでした。」 トレイを片付けに行きながらチラリと伊都の方を見る。 まだタブレットを操作しながら話している。 忙しいんだろうな。 それに比べて私は…と暗い気持ちになるが頭を横に振って気にしないようにし、その場をあとにした。  ーーーーーー 午後もつつがなく仕事を終えると、 貝原の歓迎会をするというので総務課員で会場へと向かった。 「何歳ですか?結婚してます?彼女います?」 ある程度時間が経ち、酔いが回ったサガミは貝原に質問攻めをする。 「えっ、質問多いな。」 持っていたグラスから口を離すと貝原は困ったように眉を下げた。 「ごめんなさいね。いつもはこんなんじゃないんだけど、ホラっ!」 向かいの席でテーブルに体を伏せてあぐらをしているサガミの肩をゆらす。 水を渡し、サガミはそれを飲み干すと 何とか座り直した。 が、顔は真っ赤で耳まで赤くなっている。 「大丈夫ですよ。歳は32。結婚生活3年で離婚したバツイチで彼女はいません。子供もいません。」 笑顔で答える貝原にサガミは目を丸くした。 「え!?バツイチだったんすかー!!!??」 「こら!大声出すな!!」 いい加減にしろ、とサガミの頭をタイミングよく来た課長が掴んだ。 「かか、課長〜、すみません」 「謝るなら貝原くんに謝りなさい」 「貝原さん、すみません。」 「いえいえ。気にしてないので」 しょんぼりしているサガミに優しく声をかける。 本当に気にしていないのか、腹黒いのか、 表情は穏やかなままだ。 「そうだ、大和さん、この後少し時間いいですか?」 コソッと貝原が耳打ちをする。 「え?あ、大丈夫ですけど。」 「ありがとうございます」 微笑みそう言うと隣にいた席を離れ課長のそばへと行ってしまった。 一体なんだ……? 全く予想がつかない展開に変に心臓がドキドキと強く跳ねていた。 「お疲れ様でしたー」 お店を出ると一旦皆が集まり塊になる。 今の課長になってからは基本的に二次会はなく、その後は各々で飲みを続けるという形だ。 「それでは帰りの道中気を付けて。それでは。」 「お疲れ様です。」 「お疲れ様でした。」 「バー行く?」 「いいね!」 課長は、愛妻家で有名な5年先輩の上司と先に帰路につく。 このあとは自由時間だ。 「大和さん。」 課長達の姿を見送っていると後ろから声をかけられた。 「貝原さん。」 「今からいいですか?」 「はい…」 「良かったらそこにカフェがあるのでそこで」 「いいですね!行きましょう」 てっきりまたお酒だと思っていたが予想外。 が、カフェは好きなので嬉しい。 カフェを選ぶあたり込み入った話ではなさそうだ。 だとしても何だろう? そう思いながら貝原の後を付いていく。 少し早いなと感じながらも隣に並んで歩くと、 貝原は私の歩調に合わせゆっくりと歩いてくれた。 今日一日見ていても 仕事はよく出来るしもうすぐにでも独り立ち出来るぐらいだ。 優しさもあり、大人な対応もできる。 こんな人が離婚…。 一体どんな理由で? きっとあの場にいたみんなは同じことを思ったかもしれない。 「すみません、急に。」 席につくとカバンを隣の椅子に置きながら貝原が言った。 「いえいえ。」 貝原の向い側に座ると同じように荷物を隣の椅子に置いた。 「とりあえず何か注文しますか。僕が出しますので」 「そんなそんな!」 流石に、と思ったけれど、 結局は いいんです、と言う貝原の言葉に甘えることにした。 「早速なんですが、」 「は、はい。」 貝原が改まると、ゴクリと喉が鳴った。 「システム課の彼の事です。」 「え?」 伊都くん?何で今? 「大和さんは本当に彼とお付き合いはないですか?」 「え、っと。……はい。」 悩みに悩み、やはり、付き合っているとは言えないと観念して答える。 「なら、告白させてください。一目惚れをしました。大和さんあなたに。好きです。お付き合いさせていただきたいと思っています。」 「へ?!」 急な告白に素っ頓狂な声が出てしまう。 今日、会ったばかりなのに? 一目惚れ? 私に!? 「貝原さんそんな、からかわないでください。」 急なことに頭が追いつかず冗談でも言っているのかと思う。 が、 「本気です。」 「そ、そんな、」 「彼も大和さんの事を気にかけているようでしたので、急な告白に。驚かせてすみません。」 貝原はまっすぐとこちらを見つめている。 目を合わせているのが辛くなりぱっと視線をそらす。 「急すぎてちょっと…」 それに、伊都くんが私を気にかけてる? 本当に?そう見えたのだろうか…? 「そうですよね。では、返事は待ちますのでそれまでの間に僕の事も知ってもらえたらと思います。」 「え、」 「僕のことを何も知らないままの返事ではなく、良く知ってもらいたいです。その上で、お返事もらえますか。」 「………はい。」 そこまで言われると断れなくなり 貝原に押されるような形で返事を先延ばしすることになった。 帰宅してからも、その事は頭から離れなかった。 知ってほしいって…。 何で私に。 一目惚れって…。 未だに信じられないような気持ちでいると、 ふと、伊都の事が頭に浮かんだ。  そういえば伊都の事はシステム課で働いて副業をしているということ以外にほとんど知らない。 連絡先も、どこの出身なのか、 どこに住んでいて、どんなものが好きなのか……。 「私なんにも知らないんだ」 寂しくなったのと同時に無性に知りたくなった。 何でだろう、こんなに気になるのは、知りたがるのは。 貝原に僕のことを知ってほしいと言われたのに 何故か今は伊都の事が気になって仕方がない。 「どうしよう…」 考えれば考えるほど胸のドキドキが止まらない。 胸に何かがつかえて息苦しい。 伊都としたことが頭から離れないのはもちろん、伊都の存在自体が頭から離れないのだ。 もっと、もっと伊都の事を知りたい。 なぜ伊都はあんな事をしてくるのか。 誰にでもしているのだろうか。 私達の今の関係は…。    そして、 「よし、本人に聞こう。」 一人部屋の中拳を握るとコクリと頷いた。 けれど、伊都は明日から出張で不在だと言っていた。 「出社してきたら聞こう!うん。お昼休み覗いてこよう。あとはシステム課の用事は全部私が受ければ会う確率上がるでしょ!」 完全に私的用事だが諦めたくなかった。 一通り気持ちを声に出すと頭の中が整理されスッキリした気分になる。 これでしばらくは大丈夫。 自分に言い聞かせお風呂へと向かった。 ーーーーーーーーーー 「先輩〜昨日はすみませんでした〜」 朝、席につくなり隣のサガミが頭を下げてきた。 飲み会での事だろう。 あの後かなり酔ってタクシーに乗せるまでが大変だったのだ。 「もう〜大変だったよ。けど貝原さんが何とかタクシーまで運んでくれたしカオルちゃんが付き添ってくれたから良かったよね。」 「はい〜。もうお二人には謝罪と御礼の言葉を伝えました…今後気をつけます。」 しょんぼりと言った。 珍しく落ち込んでいる。 私は精一杯背伸びしてサガミの肩を持った。 「まあまあ、たまにはハメ外してもいいさ!迷惑かけすぎなければ!」 「先輩〜ちっちゃくて可愛いです〜。二人にも同じこと言われました…みなさん優しすぎです〜。」 「はいはい。良かったじゃん!また楽しもうね!さあ、切り替えて仕事仕事!」 切り替えるように促すとサガミは元気を取り戻したようで体をパソコンに向け作業を始めた。 その様子を見て私もパソコンに向かい合うと、ふと伊都の事が頭に浮かんだ。 あれ以来本当に見かけていない。 ぎゅうっと心が締め付けられる。 しばらくすると、 「大和さん、ここ分からなくて、教えてください。」 「あ、はい。いいですよ。んーっと」 向かいの席にいた貝原がそばによってくる。 昨日はあんな事を言っていた貝原だったが変にアプローチ等もなく本当にいつも通りの貝原だ。 と、言ってもまだ一週間も経っていない。 どんな人かは分かってもきっと短期間でその人の根の部分まで知るのは難しい。 それこそ仕事以外でも付き合いをしなければ。 例え良い人だと分かったとして付き合い始めても きっとそこからまた見えるものがある。 それはお互い様なのだろうが 私は貝原にさらけ出せるだろうか。 正直、今はまだそこまでの事は考えられない。 「ありがとうございます。」 「いえ、また何かあれば聞いてください。」 優しく微笑むと貝原は自分の席へと戻っていった。 ーーーーーーーーーー 「貝原さんて絶対先輩のこと狙ってますよ!歳近いし。」 「サガミくん、歳近いは余計だわ。貝原さんに失礼。」 休憩中二人きりの部屋で話しながら私はマイボトルに口をつけた。 「すんません。」 全く悪びれた様子もなく言葉だけで謝るサガミだがすぐに真剣な表情になる。 「けど本当に狙われてますよ。何かあの笑顔とか胡散臭いから気をつけてくださいね。」 「え〜なにその理由。さっきから色々と失礼すぎる。」 笑いながら返事するもサガミは相変わらず真剣な顔だ。 「何話してるんですか〜?」 「「わあっ!!!」」 急に現れた貝原に 二人で大きな声を出してしまう。 「驚かさないでくださいよ〜。チビッちゃったじゃないっすか。俺トイレ行ってきます。」 「え!?」 そう言うとサガミはそそくさとトイレへと行ってしまい 今度は貝原と二人きりになった。 休憩終了まであと5分。 そろそろ他の人も戻ってきていい頃だがこういう時に限ってまだ誰も戻ってこない。 先程のサガミの発言もありかなり気まずい。 貝原本人に聞こえてなければいいのだけれど…。 「大和さん、明日の夜ご飯でもどうですか?」 「あ、えっと、明日?」 「はい。やっぱり仕事中だと仕事のことだけですしなかなか、進展しづらいなって。」 苦笑いを浮かべる貝原。 「ちょっと予定見てみますね。」 そう言ってスケジュール帳を取り出し明日の予定が書いてあるページを開く。 「えーと、」 指でなぞっていくと、空白だった。 「大丈夫です。」 「あ、良かった。どんなものが良いとかあります?」 「うーん、ガッツリ系なものがいいですね。」 スケジュール帳を閉じながら答える。 「分かりました。」 そう言ったところでサガミが帰ってきた。 貝原が席につこうとした時、目が合った。 微笑んできたのでこちらも笑みで返す。 が、どうにもトキメキというものがない。 恥ずかしさはあるが何かちょっと違うような…。 だんだんと明日行くのも不安な気持ちになってきていた。 「大丈夫でした?」 サガミがコソッと聞いてくる。 「大丈夫なわけない!」 「え!?」 困惑するサガミをよそに私は仕事に取替かった。 同僚として行けばいい。 自分に言い聞かせてサクサクとこなしていくのだった。 ーーーーーーー そして貝原とご飯に行く日。 なんのトラブルも残業もなく無事に仕事を終え二人で焼肉店へと向かう。 多少の不安はあるもののここまで来たなら仕方ない。 今日断る、覚悟を決めてきた。 「美味しいですね」 「うん!美味しい!」 食べながら他愛無い会話もしていたが、 どのタイミングで言おうかと伺っているうちにお酒は進み、トイレの回数も増えた。 普段から飲まないお酒。 緊張から逃れるためにいつもは飲まない量を超えて飲んでいた。 「ちょっとお手洗い、何回もごめんなさい」 そう言いながら席を立つ。 トイレに入ると「ふぅ〜〜」 大きなため息をついた。 いつまでも気にして過ごすのはメンタル的にシンドイ。 断るなら早い方がいい。 実際しばらく様子をみていたがやはり心は動かなかった。 けれど、伊都への思いは強くなっている気がする。 全然話したり、過ごしたりもしていないのに…。 早く、確認したい、顔を見たい、会いたい。 胸がぎゅうっと締め付けられる。 顔を上げ天井のダウンライトを見つめた。 「よし!」 気合を入れると貝原のいる元へと戻っていった。 「大丈夫ですか?だいぶ酔ってるみたいですけど」 貝原は心配そうにこちらを覗く。 私は残っていたグラスのお酒をぐいっと一気に飲み干した。 そして 「貝原さん、ごめんなさい。やっぱりお付き合いは…できません。」 酔ってるときにごめんなさい!そんな気持ちも付け加えて 頭を下げた。 と、急に景色が周り座っていられないほど体がグラグラに揺れる。 まずい、お酒を飲みすぎた。後悔したときにはもう遅かった。 「大丈夫ですか?!」 焦る貝原の顔が最後にうつった。 ーーーーーーーーーーー 「…っ!!」 ピリッとする痛みに目が冷める。 体は相変わらず動かず顔だけで周りの景色を見回す。 どこかの部屋?のようだ。 「あ、起きたんですか。」 と、先程とは雰囲気の違う貝原が私に顔を近づけてきた。 貝原は私の胸を鷲掴みにすると揉み始めた。 それに、いつの間にか膣に指を入れていた! 「あ、え!?貝原さん!?なにを!」 ピリッとした痛みは濡れていない状態で入れているからだと、すぐに分かった。 体を起こしたくても力が入らない。 「い、痛いです。やめてください。」 弱々しい力で抵抗するも全く効果なし。 「大丈夫、すぐに濡れてきますから。」 貝原はそう言うと片方の手で自身のベルトを外し始めた。 これはいよいよ不味い! どうにかしなければと周りをよく見回す。 枕のそばにカバンから飛び出たスマホを見つける。 連絡っ! そう思い沙奈の連絡先を開き電話マークをおした瞬間貝原に気づかれスマホを遠くへ置かれてしまった。 「何してるんですか?ほら、俺で感じてください。一回でもしてしまえば俺以外感じなくなるはずですから…さあっ。」 「くっ、本当に痛いっ」 荒く指を動かす貝原の手を少しでも離そうとするが敵わない。 「濡れないですね〜。大体の子は俺とするとグショグショなのに、雰囲気が良くなかったかな。そういえばここのホテルはベッドが浮くらしいですよ。それやってみましょうか。」 と、貝原が何かボタンを操作する。 ガタガタと揺れを感じながら少しずつ浮き上がってきているのが分かった。 「もうやめてっ」 手で抵抗しては貝原に解かれを繰り返す。 「挿入して俺のを感じましょうね。生が一番気持ちいいから生で。妊娠したら結婚しましょう。大和さんなら再婚相手として年齢も見た目も相応しいから大丈夫。俺のママは少し厳しいけど大和さんならやっていけるはずです。」 とんでもない!一体貝原は何を言っているのか!? 離婚の理由を察し背筋が寒くなる。 貝原はパンツまで脱ぐと自身の反り返ったソレを私の入り口にと押し当てた。 しかし濡れていないせいか全く感じていない。 感じていないから濡れないというのが正しいか。 それでも無理矢理に入れてこようとする貝原。 「あくっ…!」 痛みに耐え、もうダメかと思ったとき。 「うわっ!!」 声とともに私の密扉をこじ開けようとしていた貝原の存在が無くなった。 「??」 不思議に思い力を振り絞って顔をあげると そこには貝原をねじ伏せる伊都がいた。 「伊都くん!?」 体を勢いよく起こし名前を叫んだ。 「悪いけどあの人に手出していいのは俺だけだから。お前どっか行けよ。」 「あがぁっ!やっぱりお前!!」 「お前に用ないから消えて。」 貝原を立たせるとそう伝え殴り倒して部屋から出した。 入り口には心配そうな表情の沙奈もいる。 「沙奈!!」 「瑞子!!」 叫ぶように名前を呼び合うと抱きしめ合った。 「大丈夫!?」 「うん。」 泣きながら答えると沙奈は強く抱きしめてくれた。 その様子を伊都はそっと見守っていた。 しばらくして落ち着くと沙奈が状況を説明する。 「電話かかってきたときは驚いたよ!何かと思って出たら貝原さんの声と瑞子の声がして、ホテルだってすぐ分かったけどどこかは分からなかったからもう、どうしていいか…」 「ごめん。」 けど、 あのときの電話はちゃんと繋がってたんだ…良かったと安心する。 「まだ私会社にいたんだけど、ちょうどそこにこの子が居合わせて内容聞いて飛んでここに来たわけ!ホテルのスタッフさんにも事情説明してこの部屋に。」 沙奈の奥にいるスタッフさんも安心したような表情でこちらを見ていた。 「そうだったんだ。ありがとう。」 そしてスタッフさんにも、 「ご迷惑おかけしてすみません。ありがとうございました。」 「無事なら良かったです。入ってきたときの様子ちょっと気になってたので…警察には…?」 「大丈夫です言わなくて。」 自分の不注意でもあり、何より同じ会社の人と揉め事にはしたくなかった。 「分かりました」 そう言うとスタッフさんは持ち場へと戻っていった。 「この子のおかげだよ。」 沙奈に促され伊都の方を見る。 と、ガバっとすくい上げるように抱きしめられた。 「……」 伊都は何も言わずにただ抱きしめている。 「伊都くん…」 名前を呼ぶと抱きしめる腕に力が入ったので 私も応えるように伊都の背中を強く抱きしめた。 その様子を見ていた沙奈は 「何か、お知り合いというか、いい感じ?かな?お邪魔そうだから出てるね!」 と、 私の無事を確認するとそう言って部屋をあとにした。 二人きりになると伊都はポツリと何か言う。 耳を澄ませ聞いてみる。 「何で男と二人きりになったんですか……」 「え?」 思わず伊都の顔を見ると頬を膨らませ不機嫌そうな顔をしていた。 この表情は…? 「あ、そうだ。」 と、このタイミングでなぜか伊都への気持ちの確認を思い出す。 「?」 膨れながらも私が話し始めるのを待つ伊都。 「伊都くんと私ってどんな関係?」 ベッドの上に正座すると、同じくベッドに腰掛けている伊都の顔を見つめた。 「え、」 戸惑ったような表情の伊都に構わずさらに続けた。 「何で会社であんな事をしたの?今日だって何でこんなに私のことを助けてくれたの?お客さんだったから?」 長くなった質問に伊都は下を向いたが、一度口をギュッと結ぶとすぐに顔を上げ、答えてくれた。 「今までちゃんと言えなかったのは俺が悪いです。もっと早く言えてたらこんな事にはならなかったわけですし。」 そして、ベッドに上がり優しく頬を包まれたかと思うとキスをされた。 話が聞きたいのに、と思いつつも伊都のキスには逆らえない。 そのぐらいキスだけで蕩けてしまうのだ。 ちゅっ、ちゅっ、と何度か見つめ合いながらキスをしていると、フッと顔が離れた。 そして伊都が話し始める。 「本当は、3年前に入社した頃から瑞子さんの事知ってました。覚えてないでしょうけど、ヘマして屋上でヘコんでた俺に、持ってた白ぶどうのつぶつぶジュース。くれたんですよ?優しくてけど背中押してくれて…そこからずっと好きだったんです。」 「そんな、前から…」 驚きで言葉が出ない。 「部署も違うし、竹内さんと付き合ってるのは薄々感じてたから一方通行でしたけど…。 だからこそ、お店に来たときは驚きましたよ!けど、たった一晩でもあんな瑞子さんを見れて嬉しかったんです。」 切なそうに言う伊都 そしてうつむくと続けた。 「瑞子さんの気持ちは俺にないって知ってたからこのままでもいいかと思ってた。けど今回の件で無理だって分かりました。」 「伊都くん、私っ、」 私も好き、伝えようとすると唇を重ねられた。 優しいキスとは違ったちゅぱちゅぱと音を立てむしゃぶりつくような余裕のないキス。 「んっはぁはぁっ」 「はぁっはぁっ。本当は、最後までしたくてたまらないんです。俺で乱れる瑞子さんが見たい。」 私の頬を両手で包み込み見つめ合うと 息を荒くし苦しそうに言う。 薄い茶色の瞳は涙で潤んでいる。 私もすっかり身体が上気していた。 先程、貝原のときに脱がされあらわになった恥部。 そこへ伊都の固く大きくなった股間がゆっくりと、何度も何度も擦り付けられる。 苦しそうな表情も色っぽい。 そんな顔で見つめられたら余計に感じてしまう。 恥部からトロトロと温かい密が溢れるのが分かる。 「はあっはぁっ、瑞子さんに挿れたい。けど、瑞子が嫌なら俺はしない。」 さらに強く大きく腰を振って擦りつけてくる。 グチョグチョと音が大きくなった。 言っている事としている事が矛盾している、と思いながらも 私ももう今更嫌なんて気持ちはない。 「い、嫌じゃないよ。」 擦られているからか、だんだんと思考能力が落ち 快感に集中する事しか出来なくなってきている。 「挿れたい。」 髪をかき上げる伊都。 いつものいたずらな笑みはどこに行ったか 頬を紅潮させ懇願するような顔にドキッとする。 私は思わず 「挿れて…伊都くんの、私の中に挿れてっ」 もう我慢の限界だった。 こんなに蕩けさせておきながらいつも先の事はお預けだった。 だが、 今回は伊都も我慢の限界がきたようだ。 「瑞子さん、可愛い…」 おでこに優しくキスを落とし、履いていたストレートのジーンズを下ろす。 するとボロンッとビンビンに反り返った男根を出した。 亀頭の先からネバネバした透明な密液が溢れる。 伊都の密と私の密が合わさりクチュクチュと大きくエッチな音を立てながらこすりつける。 「あっあっ」 「はぁっはぁっ」 「挿れるよ…」 伊都が苦しそうに言った瞬間、 じゅぶッと先端が入った。 「あぁっ瑞子さんっ。」 一層せつなそうな表情と声を出す伊都。 息を漏らしながら少しずつ慣らすように ゆっくりと、私の中から出たり入ったりを繰り返していく。 ご無沙汰だった快感が全身に押し寄せ 喘ぎが止まらない。 「あんっ。あっあっ。あぁんっ」 次第に奥に届くようになり圧迫されていく下腹部。 苦しさと快感に溺れ、大胆にも自らねだるように言う。 「伊都っくんの気持ちいいっ。あんっもっと、もっとぉ」 伊都の首に両手を回しガッシリと足で腰を離さない。 「はあっはぁっ、もう本当に我慢の限界。瑞子さんっ、俺の事いっぱい感じて?」 そう言うと伊都は激しく腰を振り前後だけでなく斜めにすくい上げるように強く腰を打ち付けていく。 肌と肌が打ち付け合う音がパァンッパァンッと一層大きくなった。 パンパンに膨れている精子の袋が奥を突く度にお尻に当たる。 たくさん突かれているのだと思うとより感じてしまった。 「瑞子さん、瑞子さんの中気持ちいいよっ。はぁっあっ」 「い、伊都っくんっ。はげ、しいっんっあんっ」 「激しいの好きでしょっはあっあっ」 じゅぽっじゅぽっと音を立てながら伊都の男根が私の中を出入りする。 「す、好きっあんっ伊都くんに激しくされるの好きっ」 時折奥まで挿れてから腰をくねらせる伊都。 「あぁっ当たっるうっ」 今か今かと精子を待ち構える子宮はだんだんと自ら欲して降りてきた。 それが亀頭に当たり跳ねるような気持ちよさに耐えられない。 伊都は激しく振る腰をじゅろろろ〜っと亀頭が今にも出てきてしまうのではないかというぐらいの長いストロークに変える。 「あんっ抜けちゃうっ」 と、伊都が耳元で囁いた。 「はあっ絶対に抜かないよ。もう俺のしか挿れられないぐらい感じさせるから。」 「あっ」 言葉だけでも膣がキュンとなるのがわかった。 それからは伊都は亀頭だけを出し入れしている。 「はあんっあんっ」 十分いいのだが、やはり物足りない。 恥ずかしい気持ちを抑え叫ぶように言った。 「奥まで挿れてえっ」 すると伊都は腰を振りながら 「瑞子さん、エロい。」 いつものいたずらな笑みを浮かべたかと思うと 一気に奥までつかれた。 ズンっ。 「ひゃあんっ」 思わず背をそる。 そしてまたゆっくりと亀頭までストロークし いきなり奥まで挿入を繰り返した。 じゅろろろ〜……ズンっ! 「あぁあっ…あんっ」 じゅろろろ〜……ズンっ! 「はぁっはぁ〜きゃうんっ」 その度に体がはねた。 「はあっやばい。そろそろ限界。どこに出してほしい?」 さきほどよりもさらに怒張した男根で中を掻き乱される。 考える力もなくなり脳内を快楽に乗っ取られていた私は 「中。中に出してっ」 とんでもないことを口に出していた。 伊都も一瞬驚いた顔をしたが、すぐに戻り 打ち付ける腰をさらに激しく早くしていく。 「そんなに中がいいの?本当に出しちゃうよ?」 腰を激しく打ち付けながらも色気のある涼しい顔 とセリフに高揚感がさらに高まる。 「あんっあっ中っ!中がいいのおっ伊都くんの精子全部中に出してっ精子でいっぱいにしてえっ」 「はあっ、そんな事言われたら無理。絶対出す。瑞子さんの中に俺の精子いっぱい注ぐから。全部っ全部出すからっ」 「あっあんっイグっ伊都くんの精子いっぱい出してっいっぱい、あんっ、出してぇ〜っ」 ビュルルるるるる〜〜〜。 膣の中でびくっびくっと脈打つのが分かる。 とても長い射精だった。 射精している間も伊都はゆっくりと腰を振り続けている。 そして斜めにすくい上げるように腰を打ち付けると動きが止まった。 「はあっはあっはぁっ…」 「はぁっ伊都くんっ…」 名前を呼ぶと 「瑞子さん。」 ぎゅっと抱きしめながらキスをした。 ーーーーーーーーーー それからしばらく日が経った。 あの後、貝原から謝罪を受けたが他の課の女性陣にも手を出しているという噂は絶えない。 それでも何とか総務課での勤務を終え、無事に営業課へ移っている。 ルックスは良いのでしばらくはモテ続けるだろう。 そして、社内コンペの期日が迫っていた。 書類はデスク2番目の引き出しにしまっている。 応募しようか迷っていると、サガミの方からヒラリと紙が舞落ちてきた。 「あっ。」 サガミが気づくより先にひろうと、社内コンペという文字が目に入った。 「わわっ!瑞子先輩!見ないでください。けど拾ってくれてありがとうございます。」 拾った書類をサガミに渡す。 「うん。応募するの?」 「はい!しますよ。」 「へー。結構アイディアマンなのかな?」 「アイディアには自信ありますよ。それにトークにも。だからこれをきっかけに営業課に異動ならないかなって。貝原さんが羨ましいっすよ。」 なるほどそういう事か、と合点がいく。 確かにサガミは営業課向きだと感じていたからだ。   採用され、いい結果が出れば希望する異動も叶う可能性がある。 「先輩も応募しますよね?俺、一人で出しに行くの嫌なんで一緒のタイミングで行きましょうよ。」 「えぇ〜?」 何を子供みたいなことを言ってるんだ!と思いながらも 結局私も竹内にさんざんに言われたアイディアを一人で出す勇気は持ち合わせていなかった。 「う〜ん。いいよ。」 「ありがとうございますっ!!行きましょう!」 「ちょっ、待ってよ。」 先を急ごうとするサガミの背中に声をかけると、急いで二番目の引き出しを開ける。 「行動することに意味があるのよね。」 自分に言い聞かせ席を立つとサガミの後を追った。 ーーーーーーーーーー 「瑞子〜良かったじゃん!聞いたよ〜!採用はされなかったけどアイディア賞!」 コンペの結果は早かった。 カフェブースで休んでいると外回りから帰社した沙奈に声をかけられた。 応募して入賞はしたものの採用までは行かなかった。 「ありがとう。何か私の事が認められたって感じがして嬉しいよ。」 いつも仕事では感謝されることは多くなく、して当たり前のことを毎日しているような感覚でいたので、個人として評価されるのは気持ちが良かった。 「な~に言ってるの!そこが中心になったら人生つまらないよ?」 「え?」 「仕事で評価されるのは確かに嬉しい。気持ちがいいよ。けどその評価だけが自分自身をあらわすわけじゃないでしょ?仕事は悪魔で人生の一部なんだし。」 「一部か…」 沙奈の言葉にハッとさせられる。仕事のことを中心に考えてばかりいた最近。 「ありがとう、沙奈。何か、勝手に仕事をしてないみたいな負い目のようなものを感じていたの。もっと仕事できるようにならなきゃ、もっと忙しくあるべきだって。」 「仕事してないわけない!確かに部署によって忙しさは変わるけど、全体含めての組織だからね。個人の向き不向きはもちろんあるし、仕事以外の事情だってあるじゃない。まあ、チャレンジしたいのならぜひしてみるべきだけどね!」 沙奈はそう言ってウィンクをした。 「そうだね…あースッキリした!ありがとう。」 心につかえていたものが取れた気分だった。 周りの雰囲気に流される必要はない。 自分らしくいようと思えた。 その方が結果的に仕事も楽しめる。 必要なスキルアップはとりあえずじゃなくしっかり自分に必要なものを考えてから。 明るい気持ちになれたところで沙奈と別れる。 その後、システム課に行くと 竹内とばったりと会ってしまった。 「おぅ。」 「お疲れ様です。」 あれ以来竹内とは会っていなかったのでやり取りがぎこちなくなってしまう。 「コンペ入賞したんだってな。総務課なら腐る程考える時間あるもんな。とうとう異動を考え始めたか?」 コンペの話になり入賞おめでとうとも言われず いつまでその席にいるのかと言われる。 「ようやく雑用に飽きてもっとバリバリ働きたくなったんだ?」 今までなら流していた竹内の言葉。 けれど今日の私は違う。 「総務課は、確かにかっこよくバリバリって訳じゃないし、会社の直接的な売上だったり契約には関わらないけど、サポート役として自分が関われていることが嬉しいし誇りに思ってる。」 そして一歩竹内に詰め寄り続けた。 「もちろん、コンペみたいにチャンスが巡ってくる機会があれば全力でやるし、必要になればスキルアップも怠らない。それにね、どう感じながら仕事してるかは人それぞれだけど、私は総務課飽きてないから!!」 言い返されると思っていなかったのか目を丸くして一言も返さずにいる竹内。 言い切った私は竹内の後ろにいる伊都に気づいた。 何日ぶりかに見る伊都の姿に思わずドキッとしてしまう。 伊都は親指を立てグッとこちらに向けた。 それに笑顔で返すと スッキリした私はシステム課を後にし総務課へと戻る廊下をさっそうと歩く。 竹内の呪縛から開放された瞬間だった。 竹内からの言葉に自分の仕事に自信をなくしていたのかもしれない。 それがなくなり焦る必要はないのだと知ることができた。 ーーーーーーーーーー そして伊都との関係はというと… その後、連絡先を交換し連絡を取り合ったりしてカップルのような事をしていた。 「え、付き合ってないの?」 「分かんない。」 いつものカフェで沙奈と二人。 結局あの後付き合うかどうかの話しはしなかった為、関係性はさらに複雑になっていた。 「このままじゃせフレだな。」 「だよね。あんなに可愛いとか言ってくれたのに…酷い」 ストローを指で弾くと中に溜まっていたカフェラテが顔に飛んできた。 「ひゃっ!」 「ほらよ。まあ、連絡取り合ってるんだし、家にも行ったりしてるならもはやカップルと言えると思うけどね。それか、瑞子が告白しなよ。」 ハンカチを出しながら沙奈はサラリと言った。 「あー!なるほどね!そうだよね!私から告白すればいいんだ!早速今夜行ってみよう」 カバンからスマホを取り出すと伊都に今夜家に行ってもいいかのメッセージを送った。 と、すぐに返事が。 「「次の日休みだし泊まりでも良いよ。」だって!」 「おーお熱いコト。」 沙奈はケーキを一口食べると笑いながらそう言った。 ーーーーーーーーーー 「ごめんね、急に。」 「大丈夫ですよ。早く中に入ってください。」 夜になり、夕飯の材料を下げながら伊都の部屋へ。 伊都は私から材料の入った袋を持つと私の背中に手をおき優しく招き入れた。 前髪を下ろしている伊都。 家ではいつもそうするらしい。 「さっと作っちゃうね。お腹空いてるでしょ。」 「俺も手伝いますよ。」 そう言うと二人キッチンに立ち支度をしていく。 伊都は一人暮らしが長いらしく自炊はお手の物。 手際よくあっという間に支度を終わらせてしまった。 「皿洗いは後ででもいいじゃないですか。」 食べ終わった食器を洗おうと袖をまくっていると後ろに立つ伊都が私のお腹に腕を回し、肩に顎を乗せてきた。 「すぐしたほうが後が楽なの。」 気にせず洗っていると抱きついている伊都のいたずらが始まる。 「あっ」 胸元のボタンを開け、首元から中に手を忍ばせる。 乳首に触れるか触れないぐらいの力で捏ねくり回してきた。 「伊都くんっ。」 それから首筋にキスを、ちゅっちゅっと音を立てながら一つ二つと落としていく。 すると、 お尻のあたりに何か硬いものが当たる。 察した私は皿洗いを中断。 タオルで手を拭くと仕返しと言わんばかりにその硬くなったモノを後ろ手で服の上から優しく包み込み上下させた。 「瑞子っさん。」 伊都の切ない声にキュンとする。 今度は私の番だ。 後ろを振り返りしゃがみ込むと ズボンを下ろしボロンっと伊都の反返る男根を出した。 「はぁっ、はあっ」 荒い息が男根にかかる。 「瑞子さんの息が、」愛おしそうに上から私を見つめる。 私は亀頭の先端から溢れる少し苦めの密をチロチロと舐めた。 裏の筋を下からじゅろ〜と舐めあげ、 先端まで来るとじゅぷっと口に含む。 そしてそのまま根本まで口に含み 先端ギリギリまでストロークする。 じゅぽっじゅぽっ じゅぽっじゅぽっ じゅろ〜じゅぽっじゅぽっ 「はあ〜っ、あっ、瑞子っ。」 伊都は天を仰ぎ時折喘ぐ。 次第に早くストロークしていくが私も少しだけ意地悪をしてみる。 「はあっ、気持ちいい。」 精子の袋が縮みあがるのを確認したところで じゅっぽんっ! 口から出した。 「はああ〜っ!!」 伊都は悶えている。 そして、また口に含みじゅぽじゅぽと激しく頭を上下させた。 「あっあっ」 また切なく喘ぐ伊都。 一番良さそうなところで口から出すというのを繰り返す。 しかし、伊都もやられっぱなしではない。 「瑞子さん、お仕置き」 そう言うと、私を立たせて手を壁につける。 スラックスを下ろすと面積が小さめのパンティがあらわになる。 気合を入れてTバックを履いたのは正解だっただろうか。 「あっ。」 トロトロと密が溢れる密口に後ろから伊都のモノがあてがわれた。 グチョグチョとと音を立てながら伊都は擦りつけていく。 時折パァンっ!とお尻を叩いては波打たせる。 「ひゃあんっ」 「お仕置き。今日はTバックなんですね。凄くそそりますよ。エロい瑞子さん、大好き。」 「やっ、恥ずかし」 私はお尻に手をかざし隠したつもりでいたが伊都に手首を掴まれてしまう。 そしてTバックを後ろからグイグイと引っ張り上げる。 その度に食い込みはキツくなりさらに感じてしまう。 「あっああっん」 まだ挿入されていないのに硬くなった男根を蜜口に激しく打ち付けられているだけでも感じてしまう。 ぐちゅっぶちゅっ まるでキスしているようだ。 「おねだりしてみてください。」 振り向くと頬を赤く染めた色気のある顔が見下ろしている。 「ほらっお知り突き出しておねだりして。」 そう言うと、亀頭の先端を密の入り口にあてがった。 くちゅくちゅっ ちょっと腰を振ったらすぐにでも入りそうだ。 早く。早くいれてほしい。 その気持ちには逆らえなかった。 「あんっ、挿れて下さい。」 「何をどこに?」 伊都は後ろから私に覆いかぶさると小刻みに腰を振りながら耳元で聞いてくる。 くちゅくちゅくちゅっと音も早くなる。 「あっ、伊都くんのっ。伊都くんのギンギンおちんぽを、私のぬりゅぬりゅの中に挿れて下っああんっ!」 最後まで言い終わる前に一気に奥まで挿入される。 意地悪な伊都は色っぽく髪をかきあげるとメガネを外した。 「はあっ可愛い。おねだりする瑞子さんエロすぎて我慢できなかった。本気で行くよ。」 そう耳元で囁く伊都。 「あんっ。伊都くんっ、今日激しっ。んんっ。」 いつも以上に腰を大きく激しく打ち付けられる。 「はあっ、はあっ。瑞子さんがエロいおねだりするからだろ。」 パァンっとまたお尻を叩き反応を楽しんでいる。 「ひゃあんっ」 「瑞子さん痛くない?」 優しく聞いてくるがむしろ快感に感じていた私はもっと欲していた。 征服されている感覚への快感に目覚めてしまう。 「もっとぉ。お仕置きしてくださいっ。あんっ。お尻いっぱいお仕置きしてえっ。」 後ろから激しく突かれているにも関わらずさらに欲する姿に伊都も興奮していた。 「あっ、はあっ。瑞子さんエロすぎっ。瑞子さんみたいなエロ女にはたくさんお仕置きが必要ですね。」 そう言うと、じゅぶじゅぶっじゅぽじゅぽっとギンギンになった男根で中を掻き乱しながら パァンっパァンっと往復ビンタのようにお尻の肉を波打たせる。 「あんっ。あっ。伊都くんっだ、ダメ、もう。」 「いっぱいイッて。瑞子さんのイクところたくさん見たい。」 「やあっ。あっああっ。」 奥まで入り込んだ男根をグイグイとさらに擦りつけ腰をうねらせる伊都。 と、じゅぼんっ! いきなり男根を抜いてしまった。 「あんっ。何で…」 切なく言うと伊都は私のお尻を鷲掴みし揉みしだきながらまた一気に奥まで挿入した。 どちゅんっ! 「はあぁっん」 ひときわ大きな声が出る。 たった一度の挿入だけでイッテしまった。 もうお隣さんのことなんて考えられないぐらい脳内は快感に支配されていた。 ビクビクっと体が痙攣する。 と、伊都は私の両手首を掴み後ろにグイッと引っ張った。 さらに男根を奥に感じ溢れる密は止まらない。 リズムよく男根を出し入れする。 ぐちゅっぐちゅっ その度に喘ぐ。 ぐちゅっぐちゅっ 「あんっあぁんっ」 ぶちゅっどちゅっどちゅっ 「あっあっあっ」 次第に早くなり激しさも増す。 「瑞子さん、俺の精子しっかり受け止めてっ。」 そして腰をがっしりと掴むと、まるで獣がするかのようにズンズンと激しく打ち付けきた。 こんなバック初めてだった。 射精が近いのだと悟る。 「あんっ。はあんっ。伊都くんの、あんっ精子下さいっ。全部っ中に!出して下さあいっあっああぁんっ!」 「瑞子さんっ!」 びゅるるるる 脈打ちながら精子を奥へと流し込む。 長い射精の間も腰をゆっくり振り続ける伊都。 「瑞子さん、何か今日いつも以上にエロかった。」 「恥ずかしい…!」 ベッドにへたり込む私の頭を隣で優しく撫でながら言った。 そこで沙奈との会話を思い出す。 言うなら今かもしれない。 伊都の方へ体を向き直すと勇気を出して声をかける。 「ねぇ、伊都くん」 「ん?」 「…………あのね、」 これより先の言葉がなかなか出てこず気持ちは焦る。 こんなに告白するという事は難しかっただろうか?と目を伏せた先にある布団を見つめながら思う。 伊都は何も言わずに次の言葉を待ってくれている。 一度目をギュッとつむり、開けると伊都の目を見た。 綺麗な茶色の瞳だった。 そして、 「伊都くんの事が好き。中途半端な関係は嫌だから…だから、付き合ってください!」 最後まで言えた!と自分でも驚いていると、 伊都は 「へ?」 と、とぼけたような顔をしている。 その顔は一体どんな心境なのかと、どきまぎした。 すると目を大きく開き一言、 「俺たちってもう付き合ってるんじゃなかったんですか!?」 「え?!」 今度は私が先程の伊都の状態になる。 思考が止まり、言葉がすぐに出てこない。 「……え!?そうなの!?」 なんと、伊都の中ではあの貝原事件の後から付き合っていることになっていたらしい。 「良かったです。すれ違いにならなくて。では改めて、彼氏彼女としてよろしくお願いします。」 伊都は私の髪を優しく撫でながら言った。 「そういえば営業の人から聞いたんだけど、俺も瑞子さんの菜園行っていい?」 「え?う、うん。いいよ!」 竹内を一度誘った時、 そんな事はITを仕事にする俺が行く場所じゃない! と言われてしまった事があったので伊都の言葉には驚いてしまった。 「嬉しいな。瑞子さんが大切にしてるもの、俺も大切にしたいなと思ってたから。」 そう言うと私の頭を撫で優しく抱きしめた。温かい。 伊都の言葉も、体温も。私の心までじんわりと温まるのが分かった。 心音が聞こえ、ふわりと香るフランネルの匂いが心地良い。 その温もりに安心すると、だんだんと眠くなった私はそのまま朝まで眠りについた。 次の日の朝。 玄関チャイムがなったので寝ている伊都に代わり、 寝ぼけまなこでろくに確認もせずに解錠。 またチャイムがなったので玄関のドアを開けると 見知らぬ化粧バッチリの若い女の子がいた。 「何このボサボサ女」 女の子は全身を上から下まで見たあと、頭の方を見ながら私のことをボサボサ女と言い放った。 「あ、寝起きで…」 つい反応すると 「そんな事どうでもいいし。ケイは?」 伊都の副業の名前を呼ぶと 部屋の奥からこれまた寝起きの伊都が寝ぼけた様子で出てきた。 そして女の子を見るなり あちゃーという顔をする。 一体誰なのか。 その場でどういう事か伊都を問いただすと 副業していた頃の唯一の常連客だそう。 実は副業自体は半年しかしておらず私とした翌日には辞める意向を話し予約済み以外はしていなかった。 愛想もあまり良くないため押し売りもされず 半年の勤務期間、私を含めて5人のお客さんを相手にしたと言った。 本業が忙しかったのもあるが 唯一二ヶ月に一度予約してくれたのがその女の子 私入れて他は一回きり。 イタく気に入ってもらえたが私の事で頭がいっぱいになり 辞める際の最後の挨拶を忘れていたのだという。 それに怒った女の子がお店で暴れまわり何とかして住所を聞き出して家まで来てしまった。 そんなあらすじだった。 そして女の子は 「私、ケイじゃなきゃいけないの。お願い!また店に戻ってきて!」と懇願する。 付き合ってほしいと言わないあたり、この子は話せば理解してくれる人かもしれない。 そう感じながら二人の様子を見る。 「俺もう店辞めてるしこういうの困ります。」 伊都は冷たくあしらいその子を外へと追い帰すと玄関を閉めてしまった。 あんなに冷めた目は初めて見たかもしれない。 肩を落として帰る女の子。3階のベランダからその後ろ姿を見ながら複雑な気持ちになる。 そして自分以外にも伊都に感じていた人がいたのだなとちょっぴり不安に。 その後1日部屋にいたがその女の子が来ることはなく、 数日経っても伊都はいつも通り変わらずに接していた。 それでも、やはり心の底では気になっていた。 そして、 システム課でアプリ開発が始まると 伊都と会えない日々が続いた。 メッセージでたまにやり取りはするものの、やはり顔を見て、声を聞いて、温度を感じたい。 仕事中に私情をはさまないと決めていたが、 同じ場所にいるはずなのに顔を見る事もないなんて、と悶々としていた。 すぐに自宅に帰りたくなくて駅近くの公園で暇つぶしをする。 もう何度目だろうか。 夕方と夜の間には色んな人が行き交う。 自転車に乗るのを拒み帰りたがらない子供とその親、定時上がりか、スーツを来た女性や男性。 昨日も来たが、今日も変わりなさそうだ。 月はどれくらい見えるだろうか?ふと気になり顔をあげたときだった。 遠くを横切る一人の女性に釘付けになる。 何故?と記憶をたどるとあの時に伊都の家にまで来た女の子だった!! 「あっ」 呼吸が浅くなり言葉がでない。 よく見ると誰かと一緒にいる。 目を凝らして見てみると、 なんと、伊都だった。 ドクンっと心臓が鳴り 胸が締め付けられる。 石にでもなったかのように 体が動かない。 どうしよう、なんで? 確かめるのが怖いと感じながらも、 手に拳を握り、固まった足を何とか動かして後をつけた。 駅の方へ向かっている? 伊都の家にでも行くのか? そう思っていると駅前のビジネスホテルの前で止まり… そして二人はホテルの中へと入っていった。 「え、何で」 まさか、あの女の子と…? その後は力が入らず、思考も 何故?どうしてビジネスホテルに?を繰り返すばかり。 しかし、それもなくなると、空っぽになった頭と心のまま自宅方向へと歩き出した。 帰宅すると、伊都から いつもと変わらないメッセージが来ていることに気づく。 時間を見るとホテルに入ってから10分もしないぐらいの時間だ。 なんて人!!もしかしてコレカラという時に、私にメッセージを入れるなんて!! もう返す気にもなれず結局返信はしなかった。 次の日、昨日のことが気になりつつも仕事は順調に進んでいた。 休憩に入ると、一人になりたくて屋上へと向かう。 誰とも話したくない。そんな気分だった。 ベンチに一人座って外を眺めていると 隣の席にドサッと荒っぽく誰かが座った。 「なんで無視するんですか?」 不機嫌そうな顔の伊都がこちらを見ていた。 スーツを着ているなんて珍しい。 そういえば竹内も着ているのを見た。 今日はスーツ出社だったのか。 「………」 「何?無視?」 「違う。」 話す気にもなれず、はじめは無視を決め込もうと思っていたが、 きっと伊都には通じないと悟り短文で返す。 けれど、伊都の顔を見ると昨日の女の子の事が頭をよぎり、とうとう涙が溢れてきてしまった。 「瑞子さん!?」 それを見た伊都は驚きつつも私を抱きしめながら頭を撫でる。 「急に何ですか!?まさか!また何かあったとか!?」 先程までの態度とは打って変わり優しい声と態度で接してくる。 「だって、伊都くん昨日、女の子とホテルにいたじゃない。あの時の子と。」 抱き寄せられた胸を押し返し真っ直ぐに顔を見て言うと、伊都の顔は真っ青になった。 「見てたんですか!?」 頷きで返事をすると 今度は私の顔を覗きこみながら頭を撫でた。 伊都は決して私から目をそらさない。 「誤解されるようなことしてごめんなさい。けど、昨日はあの子に他のスタッフを紹介しに行ってたんです。だから俺は部屋には入らなかったし連絡も一切俺に来てないです。」 「そんなこと言われても…」 信じていいのか分からない。 「あ〜、だよな。うーん。」 必死に腕組し考え始める伊都。 眉間にシワを寄せ一生懸命に考えている。 と、 「分かった!そしたらそのスタッフに証言してもらいましょう!あ、スタッフ通じて女の子から証言してもらってもいい。それにビジネスホテルだったから受付の人に聞けば話してくれるはず! そうだ!!あとはその後すぐホテル出てコンビニ行ったんだ!ほら、レシートあるから時間見てください!何なら防犯カメラに映ってるだろうからソレも確認してもらいましょう!」 一気に話したところで私はつい吹き出してしまった。 「ふふっ」 あまりに必死な姿につい笑ってしまった。 目の前に出されたレシートをすっと伊都に返す。 疑ったり疑われたりするのはお互い気持ちが大きく動くので疲れる。 それに、伊都の言うことはおそらく本当だ。 だからもう、 「もう大丈夫。疑ってごめんなさい。」 「え?」 目を丸くしている伊都。 「俺の方こそ黙って勝手なことしてごめんなさい。俺には瑞子さんだけだから。」 そう言うと、ちゅっと触れるだけのキスをした。 二人見つめ合うと、コツンっとおでこをくっつけあった。 「伊都くん、今日は会える?」 久々に二人の時間を満喫したい、と伊都に尋ねてみる。 「もちろん!けど今日は少し遅くなると思うから…はい、鍵。」 明るくなった表情で胸ポケットからカードキーを出し私の方へ差し出した。 カードキーを見たあと伊都の顔を見上げる。 「合鍵。先に部屋で待っててください。」 弾けるような笑顔だった。 「!…分かった!」 カードを受け取ったところで 伊都の社用スマホが鳴る。 「ヘルプだ…仕方ない。それじゃ、また夜に」 そう言うと伊都は私の頭を撫で、早足で行ってしまった。 その後ろ姿を、 初めて屋上で話した時とは違う立場と感情で見つめる。 なんとも不思議な感覚だ。 「あれ〜?瑞子先輩何かいい事ありました?」 休憩が終わり席につくと隣のサガミが話しかけてきた。 「ん〜?まあね〜」 「えー!何ですか?焼肉食べに行くとか?それとも回らない寿司行くとかですか?」 「何で食べることばっかなのよ」 前のめりで話すサガミに対し冷めた目と声で返す。 「瑞子先輩の良いことってそんぐらいしかないじゃないですか」 膨れながら言うサガミの顔を見ながら そういえば、と少し前までの自分を思い返す。 「今回は違う良いことなの!」 「なんすかそれ!聞きたい!」 「休憩終わってるんだよ。ほら、仕事して!溜め込み過ぎ」 「うへー、午前中にサボってた分のツケが…よし、気合い入れてするしかない!」 自分のデスクに向かって仕事を始めたサガミをしばらく見たあと、私も残りの分に手を付けた。 ーーーーーーーーーーーー ピピッ キーをかざしドアが開く。 「お邪魔しまーす…」 真っ暗な部屋に向かって言っても誰からの返事もない。 仕事を終え部屋に来たが、住人である伊都は帰宅が23時になりそうだ、とのこと。 まずは荷物を部屋の端に置き、買ってきたものを冷蔵庫へ移す。 一度自分の部屋に帰ったときにお風呂は済ませてきたのでココでする事はあまりない。 そのため、伊都が帰ってきてから夜食用に、と軽くて消化のいいものを作る事にした。 もちろん、使う野菜は自分で栽培したものだ。 食べてもらえる人が増え野菜も喜んでいるだろう。 キッチンに立ち料理をしていると何だか同棲しているような気分だ。 するとテーブルの上においたスマホにメッセージが届く。 エプロンで手を拭きスマホを手に取った。 「あっ、よかった。」 遅くなる連絡かと思ったが22時すぎには帰宅できそうという内容だった。 作り終え、冷蔵庫へしまう。 洗い物も終わると、脱いだエプロンを手にベッドに倒れ込んだ。 優しいフランネルの香りがする。 「落ち着く。好き…」 頬をつけ、 大きく吸い込むと伊都の香りで胸が満たされた。 うとうとし始めた時、玄関が開く音がした。 勢いよく体を起こし出迎えへと走る。 「お帰りなさい!」 「瑞子さん!ただいま。」 二人は抱き合い見つめ合うと優しくキスをした。 「瑞子さん、大好き。」 伊都はそう言うとぎゅっと抱きしめる腕に力を入れ、またキスをした。 唇はいつまでも離れることなく重なっている。 私も、私も伊都くんが大好き。 伝えよう、私の気持ちを素直に。 この唇が離れたときに。 そう思いながらゆっくりと、目をつむった。 終わり
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