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「だから急がなきゃならないの。一番怖いのは、ゲームみたいにわかりやすいタイムリミットが示されていないことだから」
「どういうこと?」
「恵留は気付いてたでしょ。あの光が動いていないことに。つまり、時間の感覚がわからない。こうやって体感している時間が二時間でも三時間でも、元の世界に戻ったら一週間ってことだって、あり得る。もちろん、一年さまよった挙句、目覚めたら、たった数秒の出来事だったって可能性もあるけど」
その説明に千葉が顔を歪めた。
「浦島太郎状態ってヤツか」
「うん。でも絶対、タイムリミットは来る。あたしたちの気付かない形で」
最後のひと言に、恵留はつい声を荒げてしまった。
「気付かないうちに死んじゃうってこと? ありえない! そもそも、なんで運転手と関係ない私たちが巻き添えを食わなきゃならなかったの!」
困惑する麻耶の顔を見て、慌てて謝る。
「麻耶ちゃん、ゴメン、興奮しすぎだね」
麻耶が眉を下げて首を横に振った。
「ううん。あたしも同感だもん。なんでクラス全員、巻き添えなのって、理不尽極まりないって、ムカついてしかたない」
「んじゃ、どうすればいいのよ」
桃香がガムを差し出しながら言った。
「ほらメグ、噛んでいたら空腹感も紛れるよ」と。
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