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右に分かれた道の先にはススキのような枯草交じりの緑の葉が茂っていて、道の遠くに壊れた荷台付きのトラックが傾いていた。さらにその先には農具入れのようなあばら家が、こちらも半壊状態で佇んでいる。
「で、でも、一旦森に入って、少し休んでもいいんじゃないかしら」
赤井が提案してきた。顔には疲労が滲み出ている。
「ほら、トンネルを抜けるにはもっと歩くことになるでしょ。少し休憩した方が」
麻耶があからさまなため息を吐いて見せたが、恵留はその意見もアリだと考えた。
町を右往左往し、その後はずっと歩き続けた。一度、どこかに腰を下ろしたとしてもばちは当たらないと思うのだ。しかも、あの光は太陽ではないはずなのに、日差しと同じようにじりじりとした暑さを感じさせる。
ぐるり、周りを見渡しても見えるのは、田植えを終えたばかりにも見える水田と、何かの苗が植わった畑。あるいは雑草だらけの耕作放棄地。
初夏の風景ではあるが、体感的には夏日である。
どっと脇汗を感じ、喉を潤すためにペットボトルに口をつけた。
たった二口、三口のぬるい水が命綱に思える。このまま光を遮る物がない道を歩き続けるのは確かにきついと実感した。
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