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「ま、神社ぽい屋根が見えていたし、鎮守の森って言うくらいだもんな。神社に森は付き物なんだろうけど」
千葉はそれ以上近づく気がないのか、その場で歩みを止めた。振り返ると、森の入り口はすっかり遠くなっていた。
「なんで入っちゃダメなんだろ。日陰もあって、一息つくには良さそうな所なのにね」
そう言った恵留の顔を千葉がまじまじと見た。
「あんな所、行く気にはなれねえよ。こんなとこ、さっさと出ようぜ」
「え……?」
千葉の顔には畏れがはっきり見て取れた。
この森に対し、恵留が感じている清らかさと別の雰囲気を千葉は感じている――そう思った矢先、鼻の先に異臭が届いた。
「くせえっ、なんだ」
千葉の方が先に反応した。
何かが腐敗したような、アンモニア臭にも似たツンと鼻を突く臭いの元が森の中の茂みから正体を現した。
咄嗟に叫び声を上げていた。
「やべえ……」
「ぬえ……なの?」
それは鵺のようなキメラ状の怪獣だったが、町で対峙した鵺とは様相が違った。
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