五 秋山恵留

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――そう、あれは中学の時…… *  おとなしかった和美。色白で愛らしい友達。優しくて、控えめで、気が利いて……。勝気で物怖じしない性格の恵留とは正反対のタイプだったけれど、彼女は恵留を慕っていて、二人はいつも一緒に行動していた。  その彼女が、なぜか一部の女子から無視され始めたのが二年生の時。原因はわからない――と、和美は言っていたが、恵留は知っていた。  原因は「私」。図々しく出しゃばりの恵留を嫌っていたグループが、恵留の代わりに和美をターゲットにしたのだ。当然、クラスから孤立していく二人。 その時、恵留の下した決断は残酷だった。  恵留はそのグループに屈し、和美を見捨てたのだ。 「クラス全員仲良くしましょう」というきれいごとと引き換えに、恵留は対立していたグループに属し、和美と仲良くすることを止めた。  もちろん、和美を嫌いになったわけではないから、あからさまに無視をしたわけでも仲間外れにしたわけでもない。ちゃんと挨拶もするし、話しかけられたらお喋りだってする。ただ、優先的につるむ相手が変わっただけ。昼食のグループ、帰り道、トイレに連れ立って行く相手も、和美ではなくなった。  そして、おとなしい和美の方から、親友の座を降りた恵留に話しかける勇気など持ち合わせているはずがないことも、恵留は勘付いていた。  結果的に和美はクラスで孤立して、二年生の終わりには不登校になってしまった。
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