76人が本棚に入れています
本棚に追加
和美が心を病んで、違う学校に転校すると聞いたのは三年生に上がってすぐ。
後悔しても遅かった。
今更、和美に謝る図太さもない。
けれど、どれだけクラスメイトに囲まれていても、和美のように純粋に恵留のことを好きでいてくれる友達はいなかった。彼女のように思いやりのある友達もいなかった。うわべだけの付き合いばかりを気にして、うわべだけの友達ばかりを増やしていた。
道を間違えたまま正すこともできず、恵留は中学時代を終えた。
だから高校に上がった時、決心したのだ。
心から好きになれる友達を作ろう――と。
仲間外れのないクラスにしようと。
*
「ごめんね、和美、ゴメンね、許して……」
「めぐるー」
麻耶の声に、恵留が伏せていた顔を上げた。
怪獣の視線が逸れていた。途端に幻覚から覚めたように五感が戻ってきて、すぐに逃げなければ――と現実に向き合った。
慌てて立ち上がると、恵留と同様に放心状態で立ちすくんでいた千葉の手を取り、勢いよく引っ張った。千葉の反対の手には包丁が握られていたが、今は抵抗するよりも逃げる方が先決だ。
道の先、森の出口の方角から麻耶と桃香が駆けて来る。怪獣はそちらを見ていた。
うっそうとした低木と下草に隠れているのか、彼女らからはこの化け物が見えていないのだろう。迷いなくこちらに向かって走って来る。
最初のコメントを投稿しよう!