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「めぐる! しっかりして」
すぐ近くで麻耶の声が聞こえた。
「委員長! 目を開けろ」
「委員長!」
「メグ! メグ!」
皆が駆け寄ってきたのだろうが、瞼は重くて開けられそうにない。何とか声だけを絞り出す。
「ば、化け物は? あいつは」
「メグが追っ払ってくれたよ……いなくなった。メグを襲った勢いで鳥居をくぐった途端、化け物が消えちゃったの」
桃香は私のために泣いてくれるんだね……
「自分を囮にするなんて、なんで」
翔哉が恵留の体を抱き起した。嬉しかった。これで最期だとしても、後悔はない。
渾身の力をふるって目を開けた。
涙を浮かべた翔哉の顔と、その周りに生き残ったクラスメイト。
恵留は麻耶に向かって言った。
「こ、ここでは……ぬえに殺されたほうが、正解、かもしれない」
「めぐる!」
「だって、ちゃんと死なせてくれる……から」
死は怖くない。死の間際に思う。
「ね、私は麻耶のともだち? ちゃんと、ともだち、なれた?」
ほとんど見えなくなった視界の中で、麻耶が「決まってる、友達だよ」と叫びながら何度も肯いていた。
死は再生への道。あるいは永遠の安らぎ。
最後に息を一つだけ吐いて、真っ暗な世界に身を任せた。
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