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聞き終わった翔哉は、つい眉間に皺を刻んでいた。
「麻耶のおばあちゃんってさ、麻耶と同じで見える人だったのか」
「わかんない。そこは聞いたことないけど、ばあちゃんは御先祖様とか、神様とか祟り神の存在は当たり前みたいに信じていたよ」
「『あの世に続く道と、この世の道は見分けがつかない』か。どういう意味だろう」
「そのまんまじゃない?」
麻耶の声が背後から聞こえた。考えながら歩いていたせいか、翔哉の歩みは普段のそれと同じ速さになっていた。身長差は二十六センチ。知らないうちに麻耶の前を歩いていた。
麻耶の話を聞いて、日本書紀だか古事記だったか忘れたが、日本の神話を思い出していたのだ。
「いや、予知夢なら、比喩ってこともあるだろ。真の意味だよ。これから何が起こるのか。それに、死者の世界の物を口にしちゃいけないってのはさ、伊邪那岐伊邪那美の神話に通ずる訓話だよ。あれは死の国の入り口、黄泉比良坂が舞台だ」
「良く知ってるね」
「古事記の話だぞ。常識の範疇だろ」
「ええ、そうかな」
麻耶は驚くが、彼女の知識量の方がもっとすごい。
彼女は祖母が亡くなって以来、自分が見えているモノの正体を知ろうと、宗教関連、神話、スピリチュアル、オカルト体験の動画や本、あらゆるジャンルに渡る心霊関連の事象や物語を調べている。今やそっち方面のエキスパートと言っても過言ではない。
翔哉は少しでも麻耶を理解しようと、宗教や神話などの知識を仕入れているだけだ。
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