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私は誰にもお腹の子の父親を話さず、一人で産むことに決めた。
両親にすら言わなかった。
絶対に反対されると思ったけれど、私の意思を尊重して両親は何も聞かずにいてくれた。
友人には妃乃だけに妊娠したことを伝えた。
彼氏がいることすら話していなかったのにいきなり妊娠したと伝えられ、とても心配された。
父親は誰なのかと聞かれたけど、やっぱり話さなかった。
ある時、再びマネージャーの金城さんが私を訪ねてきた。
膨らんだお腹を見た金城さんは、無骨に分厚い茶封筒を差し出してきた。
「これから入用でしょうから、遠慮なく使ってください」
手切れ金と口止め料なのだろう。
恐らく軽く百万は超えているだろうが、私は受け取らなかった。
「必要ありません」
「加賀美さん、わかっていらっしゃると思いますが……」
「この子は私一人で育てます。父親が誰なのか絶対に他言しません」
「……そうですか」
金城さんは訝しげに私を見ていたが、茶封筒をしまって立ち去った。
やがて私は女の子を出産し、星來と名付けた。キラキラ輝く一番星が落ちてきたように、私の元に来てくれた大切な宝物という意味を込めて。
世間には絶対に知られてはいけない、人気俳優のシークレットベビー。
でも、私にとっては愛する人との大切な娘。
何があっても星來のことだけは、絶対に守り抜いてみせる――。
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