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恐らくサークルのメンバーは私たちがそんな風に交流を深めていたことは、誰も知らなかったと思う。
陽生先輩は好きなもののことになると、熱が入って饒舌になる。私の話も楽しそうに聞いてくれた。
いつしか憧れは恋心に変わっていた。
3年生最後の公演日。
その打ち上げの最中に陽生先輩からメッセージが届いた。
「抜け出さない?」
その一言に心臓は大きく飛び跳ねた。
もしかして、私の気持ちを見透かしていたのだろうか。この日、何とか陽生先輩に告白したいと思っていた。
こっそりと抜け出し、店の外で待っていた陽生先輩は月明かりに照らされ、静かな美しさを醸し出していた。
「行こう」
そう言ってさりげなく手を繋がれる。胸のときめきが止まらない。
手汗かいてないかな?と不安になりながら、そっと握り返した。
「先輩、すき……っ」
思わず口に出してしまっていた。
ハッとして陽生先輩が振り返る。目が合って、急激に恥ずかしくなって目を逸らしてしまう。
「……今の、ほんと?」
「……っ」
こんな風に言うつもりじゃなかった。
ちゃんとかしこまった感じで、面と向かって言おうと思っていたのに、口からポロッと出てしまったなんて――……。
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