秘密の恋と別れ

5/10
前へ
/194ページ
次へ
「……俺から言おうと思ってたのにな」  その言葉に聞き返す間もなく、抱きしめられてしまう。  初めて0距離で近づいた先輩は、温かくて良い匂いがして狂おしい程ドキドキした。 「好きだよ、あかり。俺の彼女になってください」  嬉しくて嬉しくて、涙が止まらなかった。  子どもみたいにボロボロ泣く私の頬を優しく撫で、チュッと額にキスされる。  びっくりして固まってしまった私を見つめて微笑みながら、今度は唇に唇を重ねた。  ファーストキスは少しだけしょっぱかった。  その後初めて先輩の家に行き、何度も抱きしめ合って何度もキスした。  交際経験のない初心な私は、何もかもが初めて。先輩はいつも優しく包み込んでリードしてくれた。 「……っ、せんぱ……っ」 「あかり、名前で呼んで」 「……っ、にちか、せんぱい……」 「先輩はいらない」 「……日華さん」 「ふっ、かわいいからまあいっか」  先輩……いや、日華さんはミステリアスだなんて言われているけど、私の前ではよく笑ってくれる。  声をあげて屈託なく笑ったり、優しく微笑みかけてくれたり、情欲激らせた色っぽい笑みを向けたり――…… 「あかり、愛してる」  そしていつでも私に対し、溢れるばかりの愛をくれる。  こんな彼を知っているのは、きっと世界で私だけ。嬉しくて幸せで、日華さんがいてくれたら他に何もいらなかった。  ずっと一緒にいられると信じていた。
/194ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3297人が本棚に入れています
本棚に追加