219人が本棚に入れています
本棚に追加
「っ……す、すげぇ」
「ごめん、引くよね」
壁面いっぱいに並べられた本。この部屋はまだマシで、隣の空き部屋はこれに加えて真ん中に本棚まで置いてある。ちなみに仕事部屋も、寝室の壁もこんな感じた。
「仕事のことをどこまで言ったか……いや、野分くんが知ってるか分からないけど。私、大学で研究職についてるの。今年からは講師もさせてもらってて、専攻は日本文学。細かく言えば中世平安文学なんだけど」
「そ、そうだったんすか」
「家でも論文は書くし、参考資料やなんだでこんな感じに……あとは人並みに本も読むから、そんなんも含めたらまぁ、溢れかえっちゃって」
「いや、人並みってもんじゃないですよね」
ただの本好きを超えるだけの冊数があることは自覚している。どこに何が置いてあるのか全て把握している程には私にとって大事なものたちだ。けれど、他人から見ればあまり居心地の良い空間でないことも分かっているつもりだ。
「この部屋は好きに使ってもらっていい。ただこれだけ本が置いてあるのも嫌だろうから、早めに撤去するまで少し我慢してもらうけど」
「え? いやそんなのは別に……む、むしろ本もこのままで」
「でも嫌でしょう? こんなに並べられてるの。前にも」
「前?」
ーこんなに本に埋もれて、人生楽しいの?ー
そう言ったあの人は、今も変わらない私を見たらなんと言うんだろう。
最初のコメントを投稿しよう!