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「っ、それに! 酔っ払ってあなたに不快な思いをさせた女の家なんて、ほんとは嫌でしょう?」
「それは、まぁ」
「くぅ〜正直! だからここに住まない方がとも思ったけど……でも、一度した約束を破ることの方が大人としてだめだと思うから。とりあえずあなたの周りが落ち着くまで、この部屋は好きに使って。お風呂場やキッチンも案内するから、どこも好きに使って」
「ほんとに、いいんですか?」
「いいもなにも、私が言い出したことなんだから。ちゃんと責任はとるよ。自分の家と思って使って。開けちゃいけない部屋とかもないから」
「えっ、いやさすがにそれは……寝室とかは入りませんし」
先程までの硬い雰囲気が彼から消えていったのが分かる。ただでさえ傷ついている彼をそれ以上に不安にさせたことを改めて反省した。
「……ごめんね」
「何がですか?」
「住めると思ってきたのに、こんな部屋しかなくて。それにその約束も覚えてないから、出迎える準備もしてあげられてないし」
「あ、いや、それは俺も悪かったんです。完全な口約束だったんで」
「でも不安にさせたよね」
「そんなことは」
彼が不安なく自分の家に戻れる日まで、なんの心配もなく快適に過ごしてもらえるよう、私も努力しよう。
「私のプライバシーは気にしないけど、あなたのプライバシーはきちんと守るから。細かいことは後で決めましょう……とりあえず」
「?」
「おなか、すいてない?」
時刻はとっくに20時を過ぎていて、入れたコーヒーも冷え切ってしまっている。不安解消の一歩はまず、腹ごしらえだろう。
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