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「色々あってうちに来たんだし、快適に過ごしてもらおうと思ったけど。彼の快適を害する一番の存在は私だよ! 何も起きないし起こさないけど、顔を合わせれば万が一何かが起きてしまうかもしれないし、いや何かとか絶対あり得ないけど! 耐えるけど! でもでも、ひとつ屋根の下で過ごしたなんて。それこそ周りから見れば何を連想されてしまうか分かったもんじゃない! そもそも野分くんがもうかわいいもんだから、お酒とか入らなくても何がなんだか……っもう自分で自分が! 何も! 信じられない!」 「あー! もう! 何ナニうるっさい!」  ダンッと机を叩く楓ちゃんに、思わず私の回り続けた口も止まった。人が真剣に悩んでいたことを、うるさいのひと言で終えられてしまうことに何も思わないこともないけど、確かに昼下がりのカフェにしてはちょっとうるさかったかもしれない。 「な、なによ」 「気をつけないと、途中本音が隠れてたわよ」 「ごめん、つい」 「で? 一体どこに寝泊まりしてるの?」 「か、関係ないでしょ」 「あら〜? なら勝手に妄想しちゃうわよ? 道行く男を引っ掛けて毎日とっかえひっかえしてるとかー、パパとの隠れ家を順番に回ってるとかー」 「なんで楓ちゃんはすぐに私をふしだらな女に仕立てちゃうのよ」 「本当は純朴な乙女ですって? ははっ笑っちゃう」 「笑えないから」  私たちにとっては日常会話の範囲内だけど、隣の机に寄っているOLたちから冷たい視線をいただいているので、そろそろこの話は終わりにしたい。どう考えても真っ昼間に話していい内容じゃない。 「……大学だよ」 「っ、はぁ?」 「そ、そんな驚かないでよ。仮眠室もあるから、そこ使ってんの。どっちみち今大学も繁忙期だし」 「それ、春田さん知ってるの?」 「教授が? 知らないんじゃない? 別に興味もないでしょ」  春田さん、とは私が勤めている大学の教授で、同じ研究室に所属する謂わば私の直属の上司だ。ちなみにこの前休日に呼び出してきたのもその人。彼も今大きな論文を抱えていて、むしろ彼の方こそ研究室のソファにでも寝泊まりしているのではないか。仮眠室とは棟が違うから分からないけど。
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