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「春田さんにはちゃんと言っといた方がいいわよ」 「え、どうして?」 「その仮眠室、大学関係者なら誰でも使えるんでしよ?」 「まぁ、だいたい教授とか講師とかが使うけど。でもめったに誰も使わないし」 「ぜーーーったい、言いなさいね。今日、この後、すぐに」 「わ、わかったよ! うるさいな!」 「あと、今日は帰りなさいよ。サークルの集まりがあって夜は友だちの家に泊まるって、彼言ってたわよ」 「なんで楓ちゃんがそんなこと知ってるのずるい」 「ずるいと思うなら会話しなさいよ、あんたたち」  ずるいとは思うけれど、顔を合わせる自信がないのも事実なのでどうしても渋ってしまう。昼休憩中に帰っては洗濯関連や掃除を終わらせて出てきているが、そんな生活もいつまでも続けられないし。実質2週間も空けてしまったなら、家の中も一度ちゃんと見ないといけないよな、と自分に言い聞かせて午後の業務に戻った。 「おかえりなさい!」 「…………た、ただいま」  なんで私は楓ちゃんの言うことなんて信じてしまったのだろう。よくもまぁサークルの集まりだの友だちの家に泊まるだの、そんな嘘をスラスラ言えたもんだなと、思い浮かんだ顔にため息をついた。 「ご飯、食べましたか?」 「え?」 「俺が作ったのでよければ、一緒にどうですか?」  今日帰ることを聞いたのだろうか?  それとも楓ちゃんと口裏を合わせていた?  まさかそこまでとは思わないけど、なんとなく疑念も晴れないまま、それでもいつまでも玄関で立ち往生するわけにもいかないので家へ上がる。自分の家なのに思わず「お邪魔します〜」なんて言ってしまいそうだ。
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