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「驚いた……若いのに、しっかり料理するのね」 「俺料理は割と好きなんです。調理師の資格取りたくて専門に行ってて。すみません、冷蔵庫とかいっぱいにしちゃって」  彼のことを何にも知らない自分がいることに改めて気付かされた。あの夜に出会って、次の日に家を提供して……私たちの関係はそれだけだった。 「キッチンも勝手に使っちゃって」 「冷蔵庫もキッチンも用具も、なんでも好きにしていいんだよ」 「ほ、ほんとに……? っ、ありがとうございます!ここのキッチン広くてキレイで、もうテンションあがって!」  顔を合わせたのは今日を入れてもたったの3回だったけれど、それでもこんなに眩しい笑顔を初めて見れて、私まで嬉しくなる。 「……なに笑ってるんですか?」 「野分くんのエプロン姿もかわいいなと思って」 「なっ! ふざけないでください。これは標準装備です」  それと同時に情けなくもなった。私自身のことも、彼には何も話していないのだから、彼の方こそ不安だっただろうに。 「今までの、私が食べなかった分はどうしてたの?」 「あーそれはまぁ次の日の弁当にしたりとか……って、いや、違いますから、ほんと、今日だけですから」  嘘もつけないし、誤魔化し切ることもできない純粋さについには目眩がしそうだ。快適に過ごしてもらうはずで姿を見せなかったその行動は、全くの逆効果だった。 「ほんとに、今日はたまたま」 「食費、どうしてるの?」 「調味料は使わせてもらって、あとはまぁ、手持ちがあるので」
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