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半熟卵の忌々しさ
半熟卵トッピングの忌々しさ
積み上げられた木箱の中のストレート麺。
それは、白粉の清々しくも艶やかな舞妓の風格をも醸し出している。
では、薄紅色の唇は何処だろう?
ふと、手元の小瓶に目をとめる。
薄切り大根の桜漬け。
気付かないのは己の不甲斐なさ。
それでも良いのだ。
私は、麺と白米とを相入れない主義なのだから。
醤油ラーメン。
朴訥な立ち居振る舞いには感服である。
私自身の罪に対する慚愧の念、とでも言っておこう。
聡明な鶏ガラの海。
大航海を旅する国籍不明のナルト船。
行く手を阻む、メンマ王国の大艦隊。
海苔という名の黒船は、お構いなしに航行の自由を遂行する。
リアルと虚構の狭間に広がる香り。
空腹中枢に敗れた戦士は、士気を失い神に懺悔し啜る。
半熟卵という謎の生命体が、ストレート麺に沈みゆく。
そうはさせまいと、蓮華の御加護で救済し、黒船に乗せる。
これで熱は伝わらない。
ところが、しばらくすると、半熟卵は再び大海原へとダイブする。
完全な煮卵にはさせまいと、私は蓮華とタッグを組んで、ナルト船への救出を試みるが失敗に終わる。
ネギという名のサルベージ船は、とうに胃袋の中だ。
どうしようもない。
私は、クライマックスのイベントを諦めて、卵を口いっぱいに頬張るが、完全なる煮卵と化したそれは、スープ無しには飲み込めなかった。
私に与えられた罰なのだろう。
思考を凌駕する、夏前の夕暮れパラドクス。
おわり。
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