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「屋根を飛び交うんだよ、スゲースピードで」
勇気の熱弁に、両親は思わず顔を見合わせて笑った。
「学校の七不思議とかって、今ないのか。とつぜんピアノが鳴るとか、動く人体模型とか」
「七不思議? 聞いた事ないなぁ。キムの頭がヅラかどうかって事くらいかな」
そう言うと、夕子のゲンコツが勇気の頭に飛んできた。
「それはただの陰口だろうが」
怪談話や妖怪、幽霊より怖いのは夕子かもしれないと、ヒリヒリする頭をなでながら、勇気は思った。
次の日の朝、勇気は怪談話をこしらえるために、朝早く家を出た。
向かった先は、榎本ミートの向かいのパン屋「ドリームベーカリー」である。
「おはようございま~す!」
元気よくあいさつして店内に入ると、エプロン姿の少女がこちらをにらんできた。
「おはよう、じゃないから。何、こんな朝早く」
彼女の名前は菅原由夢。元気いっぱいの、勇気とは幼稚園の時から付き合いのある、幼馴染みだ。
「ちょっと自由研究の事で聞きたい事あってよ」
「お店の手伝いの邪魔だから、後にしてくんない?」
そう言って、焼き終えたパンを店頭に並べ始めた。
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