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「しょうがないだろ。自由研究に使う資料を図書館で探していたら、時間がかかったんだから」
「ネットで調べればすぐだろ。何だっけ、コピペだっけ。あれで楽勝じゃんか」
勇気は冗談で言ったつもりだったが、勉の目は笑っていなかった。奥底で何か光った様にも見えた。このスイッチが入ると、たいてい彼の勇気に対する説教が始まる。
「とりあえず、上がれよ。暑かっただろ」
そうなる前に、勇気は話を切り出した。
「そ、そうだよ。ベンちゃん。ムボーちゃんちの地下涼しいし、飲み物もお菓子もあるよ」
遅れて、民雄も助け船を出す。普段は鈍感な彼でも、さすがに日頃の経験から場の空気を察したらしい。
勉はまだ怒りが収まらない様子で、両肩をぷるぷると震わせていたが、
「ネットは確かに便利だけど、そこでは知り得ない情報が、本にはたくさん詰まっているんだからね」
とだけ言い返すと、靴を脱いで家へと上がった。
自由研究はその名の通り、何を題材にしてもいい事になっているが、さすがに五年生ともなると、市販の工作キットを作って済ます、なんてわけにもいかなくなっていた。
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