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途中でさすがに自分の走っている道に自信がなくなって、僕は市街地の道端に車を停めた。
車内のマップライトで地図を見直す。
インターネットが登場する十年前の時代だから、専らアナログな手段しか経路を検索する手段がない。
今いる場所を確かめているうちに僕は、ある良いことを思いついた。
当時京都市内に、大学のサークルの二個下の後輩である”エイミー”こと瑛美が住んでいた。
彼女に電話をして道を聞いてみればいい。
本当に良いきっかけがつかめたと、僕は気分が高まった。
実は僕はその頃、エイミーに思いを寄せていた。
彼女は、クリエイティヴな女性で、イラストを描くのが得意だった。
人と話すのがあまり得意でなかったようだが、うれしいときや面白いときはとびきりの笑顔で応えてくれた。
半年前、僕がサークル内で作成していた会報の記事が物議を醸しだし、サークルリーダーから厳しい批判にさらされた。
そのイラストを担当していたエイミーも一緒に突き上げられ、彼女がメンバーの集まる皆の前で、大粒の涙をこぼして「ごめんなさい」と泣き続けていた。
そのようなことがあったせいで、僕は庇っていた彼女を強く意識するようになっていった。
そう、あの頃の恋には理屈なんてなかった。
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