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僕は無力感に沈みながら、海水浴場で有名な白浜を経由して曲がりくねる真っ暗な海岸線を走り、串本・潮岬には早朝六時ごろに到達した。
まだ誰もいない崖っぷちには、底知れぬ恐怖心がよぎった。
自分の中の衝動、モンスターが何かしでかさないか、しきりに心配した。
おそらく僕がこれまでの人生で一番死にたかった季節から、まだ三年しかたっていなかったのである。
なるべく崖から遠ざかることしか自衛の方法がなかったと思う。
強い浜風が吹きすさぶ中、そうやって遠くから海を眺めていたが、ふと目を落とすとスイレンが群生していた。
それからは、何の生気も感じ取れなかったのをよく覚えている。
つまりは、僕に通う命が細く途切れそうになっていたのかもしれない。
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