雨宿り~Side:朔~

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「俺はあなたが思ってるような奴じゃないですよ。」 「え?」 俺は萌の方をみると、彼女に近付いた。 彼女も俺の目をじっと見つめた。 俺は彼女の頬にそっと触れた。 だめだと分かっているのに、どうしようもなく彼女に惹かれてしまう。 俺はそっと唇を近づけた。 「あっ、」 彼女が寸前のところで顔を逸らした。 お陰で俺は我に返った。 「俺、帰ります。」 「でも、まだ雨が…」 「ここから走れば5分くらいで家に着くので、萌さんに傘持ってきます。」 「そんな、申し訳ないです。」 「気にしないでください。萌さんが濡れたら大変だ。」 「優しいですね。」 優しくなんかない。 今だって、彼女に触れたくて堪らないというのに。 「すぐ戻ります。」 「待って。」 萌は走り出そうとする俺の腕を掴んだ。 「私も連れてってください。」 俺は振り返り、萌の顔を見つめた。 「だめですか?」 断れ。 彼女は危険だ。近付くな。 俺の心はそう叫ぶのに、口から出た言葉はまるで違った。 「……いいですよ。」 「ありがとうございます。」 萌は微笑んだ。
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