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「少し走りますが大丈夫ですか?」
「はい。」
俺は萌に手を差し出した。
彼女はそっと俺の手を握った。
「足元気をつけて。」
俺の言葉に萌は頷いた。
俺たちはずぶ濡れになりながら、夜の街を走った。
「待って、はぁ…もう走れない。」
振り向くと萌が息を切らしていた。
俺は立ち止まり、その場にしゃがんだ。
「乗ってください。」
「でも…」
「あと少しなので。この時間、外を出歩く人もほぼいませんし。」
「はい。」
萌は恐る恐る俺の背中に乗った。
「しっかり掴まっててください。」
「重くないですか?」
「全然。」
俺は夜中に何をやっているのだろう。
自分から沼に踏み込んでいるではないか。
「朔さん?」
「すみません。動きますね。」
その時、萌の細い腕が俺の首に巻きついた。
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