雨宿り~Side:朔~

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「着きました。」 俺はマンションのエントランスに入ると、萌を背中からそっと降ろした。 「ありがとうございました。」 「いえ。」 勢いで萌を自宅に連れてきてしまった。 でも、今夜は雨が降ってるから仕方ない。 彼女にタオルと着替えを貸して、服が乾いたら家まで送る。 決して、指1本触れない。 俺はそう心に誓ってから、オートロックを開けた。 「行きましょう。」 「はい。」 俺は先に萌をエレベーターに乗せると、4階のボタンを押し、ドアを閉めた。 部屋に着くまでの沈黙が気まずい。 結局、何も話さないうちにエレベーターが目的の階に止まった。 エレベーターを降りたあとは、俺の後ろを萌が静かに着いてきた。 そして、自宅の玄関の前に着くと、俺は鍵を開けた。 「どうぞ。」 「お邪魔します。」 「すぐタオル持ってきますね。」 「ありがとうございます。」 俺は洗面所からタオルを取りに行き、急いで萌に手渡した。 「あの、俺の着替えしかなくて申し訳ないのですが、服が乾くまで着ててください。」 「そんな、申し訳ないです。」 「でも、そんなに濡れてたら風邪を引いてしまう。」 俺は、半ば強引に萌に着替えを渡した。 「そこに脱衣所がありますので。乾燥機も自由に使ってください。」 「何から何まですみません。」 萌は頭を下げると、脱衣所へと入っていった。 その後、俺も寝室へ行き、着替えを済ませた。 スーツはびしょ濡れ。 明日、クリーニングに出した方が良さそうだ。 「参ったな…」 萌の服が乾くまで約2時間。 果たして俺の理性は保たれるのだろうか。
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