押す前に引け~Side:朔~

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俺は隣で眠る萌を起こさないように、ベッドから起き上がった。 時刻は午前6時。 俺はシャワーを浴びる為、バスルームへと向かった。 今度こそ、浮気はしないと決めたのに。 その決意が今にも崩れてしまいそうなくらい萌は理想の女性だ。 あんなにも、心が踊る駆け引きはいつぶりだろうか? 俺はやはり最低だ。 だが、それでこそ俺なのだ。 俺はシャワーを止め、バスルームから出た。 すると、萌が眠気眼を擦りながらベッドから起き上がる所だった。 「おはよう。よく眠れた?」 「うん。お陰様で。」 寝起きの表情もあざとくて可愛い。 今まで、何人の男たちが萌の魅力の虜になったのだろうか。 「朔くんはシャワー浴びたの?」 「ああ。仕事だからね。」 「そっか。私も仕事行かないとな。」 離れ難いと言わんばかりの萌の表情が、俺の心を掻き乱す。 これも彼女の策略なのだろうか? 「支度が出来たら送ってくよ。」 「ありがとう。でも、大丈夫。この時間なら電車もあるから。」 まさか、断られるとは思っていなかった。 「洗面所だけ借りるね。」 「うん。」 そういうと、萌は起き上がり、身支度を始めた。 「このスプレー使っていい?」 「どれ?」 「これ、彼女のでしょ?」 「ああ。いいよ。たまに俺も使うし。」 「そうなんだ。減ってたら、彼女に私と居たことがバレるかなって思ったんだけどな。」 「んはっ、バレたいの?」 「ううん、バレるか、バレないかのギリギリがいい。」 「うわっ。最低だ、笑」 「それはお互い様でしょ。」 萌は俺に微笑んだ。
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